ゲーム広告におけるクリエイティブディレクションとは・・・小霜和也「ゲーム広告はこう作れ」第9回 | GameBusiness.jp

ゲーム広告におけるクリエイティブディレクションとは・・・小霜和也「ゲーム広告はこう作れ」第9回

ゲーム業界の皆様、こんにちは。最近、「GATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」のコミック版にハマっている小霜です。

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ゲーム業界の皆様、こんにちは。最近、「GATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」のコミック版にハマっている小霜です。今回は、ゲーム広告におけるクリエイティブ・ディレクションについて話してみます。

まず広告クリエイティブ・ディレクターとは何者か、ですけども、これは広告商材のカテゴリーを問わず「クライアントに対峙して、クリエイティブの一切の責任を引き受ける者」という定義でほぼ間違いないかと思います。

自分の名刺にはクリエイティブ・ディレクター/コピーライター/コンサルタントという肩書きが乗っていますけども、プレゼンテーションはもちろん、打合せから調査から撮影から編集からほとんど全て立ち会いますし、必要とあればコピーも書けば企画もすればアートディレクションを自分ですることだってあります。スタッフの尻ぬぐいは、全てやります。

やる領域はけっこう広大ですが、企画する「方向付け」をスタッフにすることが、その中で最初にすべきことです。つまりディレクション。「ディレクター」の所以ですね。

ではゲーム広告の場合、その方向付けとはどういうものか。言い方を変えるとそれは、「ツボ探し」みたいなことになります。たとえば「GATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」がゲームになったとするじゃないですか。そしてこいつのCMを企画することになったとします。最初に考えるのは、「ターゲットはこのゲームのどこにキュンと来るのか?」です。

この「GATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」とは、すごくシンプルに説明するとファンタジー版戦国自衛隊みたいなお話で、突然銀座に現れたゲートから異世界の軍勢が進行してきた。

それを返り討ちにした自衛隊がゲートの向こうの「特地」まで派遣された、という内容。その中で僕自身がキュンと来たのは、ドラゴンをどうやって退治するかという作戦会議の場面。「あのドラゴンは装甲が第3世代主力戦車級。だから戦闘機のAAM(対空ミサイル)では貫通できない。AAMで50メートル以下まで高度を下げさせ、榴弾砲で威力砲撃。さらに下がったところで対戦車徹甲弾頭ミサイルで貫通させる」といった説明がなされるんだけど、「わかってるなあー」と。

F-2とかA-10とかの対地攻撃機ならイッパツでやっつけられると思うんだけど、派遣航空自衛隊はF-4ファントムとかの旧式装備しか持っていないって設定なので。だとしたらそういうことになるわなあー、と。ミリオタの自分にはそういうところがツボなわけです。

なので、自分のようなミリオタをつかまえるには、その戦闘シーンを15秒で見せてあげればよい、ということになります。でもそこにキュンと来るのは非常に特殊な人に限られるかもしれない。やっぱアサルトライフルと死神のハルバードが入り乱れる戦いにキュウンと来る人の方が圧倒的に多いですよ、となれば、じゃあそこをどう表現するか考えようぜ、とスタッフにディレクションするわけです。

この連載の「コピー」の説明回で、「モンスト」は「引っ張りハンティング」というコピーが引っ張ってる、といった話をしたことがありましたけど、これも最初に「このゲームのツボは引っ張って弾く『快感』だ。そこをどう表現するか考えよう」というディレクションがあったはずです。それをmixi側がやったか、エージェンシー側がやったかは知りませんが。そこからコピーが誕生し、CM企画が提案され、という流れになったのでしょう

近頃はスマホゲームCM、本当に増えました。正直、「ヘッタクソだな~」と思うものも。おれの連載ちゃんと読んどるんか!て感じですが、つい上から目線になっちゃいました、すいません。

数年前、スマホゲームCMがいろいろ出て来た頃は、「けっこう、まっとうなCMやってるじゃん」て印象持ってたんですね。しつこいようですが、つい上から目線ですいません(元いた会社で後輩だったアートディレクターがネットでいじめられ中だったりしてちょっと過敏なのです。ちなみに僕は企画をパクられてばかりですが。

おそらくあまりにスマホゲームCMが増えて来たので、クライアント側にもクリエイター側にも「他と違う見せ方しなければ」という意識が強くなりすぎてるんじゃないかという気がします。その度が過ぎて、意味不明領域に入っちゃってるような。

また、広告業界広しと言えど、ちゃんとクリエイティブ・ディレクターできる人って意外と少ないですから、人材が払底気味なのかもしれません。僕は30年ぐらい前に新卒で広告代理店に入ったんですけど、その頃、CDといえば全社のクリエイター数百人中、2,3人ぐらいしかいませんでした。

当時の僕の上司の名刺には確か「2級コピーディレクター」なんて書かれてました(「名刺に2級とか書かなくていいだろ!」と思いました)。CDとは広告主のコミュニケーション全責任を負える力のある者しか与えられない称号だったわけです。モンハンなら「レジェンド」みたいなものでしょうか(ちょっと違いますか?)

ところが今は、どこのエージェンシーでもプロダクションでも、ある職業年齢に達すると自動的に「クリエイティブ・ディレクター」という肩書きが付いちゃうんですね。これはその人も含めて、非常に不幸な仕組みではないかと僕は思っています。「昆虫博士」ぐらいの経験しかない人と、30年毎日やり込んだ「レジェンド」と、同じ称号でいいわけないではないですか。ゲーム内世界ならまだしも、どっちに100億円のコミュニケーションを任せたいでしょうか。

名ばかりのCDは、ディレクションができないんです。スタッフ集めて、「とりあえず面白い企画考えてくれない?」つって、テーブルにCMコンテを並べさせて、「これとこれとこれが面白そうだからプレゼンしよっか」と、そんなかんじだそうです(多くのCMプランナーの証言による)。

表現面が多少奇抜だからといっても、大きなストラテジーやディレクションがないと、次につながっていきません。

コンシューマー向けのパッケージ系ゲームなら発売日に一気に売って(業界用語で「垂直立ち上がり」などと言います)、終わり、ということもあるかもしれませんが、オンライン系は離脱防止も含めどれだけ時間をかけて持続・拡大させるかが勝負。

このターゲットを獲ったら次はどうするか、アクティブユーザーを絞って課金を高める方向か、ライトユーザーに拡げる方向か。物販、他コンテンツ展開といったビジネスモデルの拡大とどう連携するか。そこまで考えないといけないんです。

話をまとめます。

要は、今回僕が言いたかったことの結論は「GATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」のゲーム版出してくださいよ、ってことなんですよ。できればPC版で、『Skyrim』的な3DのアクションRPG方向で。

PS4とかのコンシューマー版もいいけど、やっぱPCでMOD楽しみたいしねえ・・・などと脳内で勝手に盛り上がってますが、市場が日本だけになっちゃうしとてもリクープしなそうなのは理解しております。

まあここは、スマホゲームで手を打ちましょう(しつこいようですが、つい上から目線ですいません)。そしたらフィギュアの物販にも手を出してしまうかも・・・!
《小霜和也》

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