東南アジアのゲームアプリ市場開拓に関して知っておくべきこと(後編) | GameBusiness.jp

東南アジアのゲームアプリ市場開拓に関して知っておくべきこと(後編)

前編では、東南アジア進出においてモバイルゲームデベロッパーが知っておくべき言語やインフラ、そして決済モデルについて紹介しました。

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東南アジアのゲームアプリ市場開拓に関して知っておくべきこと(後編)
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前編では、東南アジア進出においてモバイルゲームデベロッパーが知っておくべき言語やインフラ、そして決済モデルについて紹介しました。今回は後編として、利用端末や消費行動の違いなどを紹介します。なお、前編に続いて後編も、アメリカのゲーム業界のコンサルタントであるJosh Burns氏が、AppLovin本社のブログに投稿したコラムを、AppLovin日本法人の林が日本の読者の皆様向けに編集してお届けします。

前編で触れたとおり、東南アジアのモバイルゲーム市場は急成長を遂げおり、モバイルゲームデベロッパーならばこの地域への進出を真剣に検討すべきでしょう。これには主に2つの理由が挙げられます。1) 進出に必要な労力が比較的少しで済む、2) 大きなチャンスが見込まれる、ということです。後編でも引き続き、デベロッパーに知っておいて欲しい、いくつかのポイントをご紹介します。

■ユーザー数では勝るAndroid、ユーザーがより課金する iOS

東南アジアでは、端末が安いという理由で、iOSよりもAndroidの方が市場に浸透していますが、使用されているAndroid端末の多くは、欧米では見かけることがほとんどない低性能のものです。そのため、そうした低性能の端末では、自社のゲームがうまく起動しない可能性があることを、デベロッパーは理解しておかなければなりません。

一方、東南アジアにはシンガポールなど多くのiOSユーザーが見られる国もあります。シンガポールではiOSユーザーのゲームの収益化はかなり良好で、調査会社「Newzoo」によるとユーザーがひとつのゲームアプリに費やす平均消費額は226ドルにのぼります。東南アジアの大手ゲームパブリッシャー、Ini3 Digital PLCのビジネス・デベロップメント・ディレクターのAndy Pichayapa氏によると、東南アジア全体ではAndroid ユーザーが60%、iOSユーザーが40%を占めていますが、そこからあがる収益の割合は半々になっています。また、Altitude GamesのCEO、Gabby Dizon氏によると、東南アジアではインストールの90%がAndroid端末からとなっている一方、ARPU(Average Revenue Per User: ユーザー1人当たりの平均売上額)やCPM(Cost Per Mille: インプレッション単価)が高いのはiOSとのことです。

■成長ペースが速い小規模市場

収益面で規模が小さい国ほど、成長のペースが速くなっています。Andy Pichayapa氏によると、モバイルゲーム市場が最大かつ海外からの投資にオープンなタイは急速に成長しているとのことです。その他に、ベトナムやフィリピンなども急速なペースで成長しているようです。これらの国では、スマホの急速な普及や決済サポートの整備などを追い風に市場が成長しています。

国ごとに見てみると、まず注目すべきは約2,000万人のスマホゲームユーザーがいるベトナムでしょう。スマホゲーム人口がとても多い国にもかかわらず、政府による厳しい規制から海外ゲームのベトナム進出が難しいです。こうした背景もあり、現地のゲームデベロッパーやパブリッシャーの存在感が極めて高くなっています。ユーザーの1日のスマホ利用時間は平均5時間で、ゲームユーザーは1日に2.5セッションをプレイし、合計で3時間もゲームに費やしています。また、レースゲームやRPGの人気が高いのも特徴です。デザインや UI へのこだわりがあるため、OnClanというゲーマー向けのSNSをよく利用しています。

またタイでは、2018年にゲームの売上高が4.85億ドルに達する見通しです。政府は、4Gネットワーク拡充に向けて投資を拡大しており、スマホ普及率は約50%になっています。ユーザーが1日にスマホに費やすのは平均5.7時間で、Newzooの推計によると1,700万のスマホゲームユーザーがいるとのことです。

次にインドネシアです。この国は大きな市場が眠っていると言えます。人口は東南アジア第1位の2.58億人で、第2位の人口を抱えるフィリピンの2.5倍の規模です。また、インドネシアの若年層の間では『アサシン・クリード』や『クラッシュ・オブ・クラン』などの戦略シミュレーションゲームの人気が絶大です。モバイルゲーム人口は3,000万人を誇るため、この国に進出して得られるメリットは大きいと考えられます。さらにNewzooによると、Androidでの30日後のリテンション率は東南アジアで最も高くなっています。

最後にフィリピンです。前編でも触れましたが、英語が公用語のため、英語のモバイルゲームを既に持っているゲームパブリッシャーには有利な市場です。スマホ普及率は東南アジアで最も早いペースで上昇しています。

■現地向けイベントで収益拡大

東南アジア進出を決めたならば、それぞれの国で人気のあるものを調べるべきでしょう。たとえばGabby Dizon氏によると、タイのゲームユーザーはスペシャルなことを好むため、スマホのスキンシールやステッカーなどのアイテムを提供したり、タイの旧正月「ソンクラーン」のタイミングでゲーム内イベントやスペシャルコンテンツを打ち出したりすると収益拡大につながるようです。東南アジア進出においては、どういったことが好まれているのか現地の嗜好を探って、国ごとにトレンドを反映したプランを立てることがよいでしょう。

■人気の高いe-Sports

Newzooが発行したレポートによると、東南アジアではeスポーツの視聴率が最も速いペースで伸びています。東南アジアのeスポーツ視聴者数は現在950万人いますが、2019年までには倍の2,000万人近くに達する見通しで、ライトユーザーを含めるとその数は倍の4,000万人になると推計されます。東南アジアにはeスポーツ専門のプロゲーマーがいて、特にフィリピンはプロゲーマーの拠点となっており、eスポーツの熱狂的なファンが140万人、ライトユーザーが180万人にいます。マレーシアでは 『Crisis Action FPS-eSports』というゲームが、現在Androidのトップセールスランキングで第3位につけています。

東南アジアのモバイル市場は国ごとでは小さいかもしれませんが、それら国を合わせて見ると大きな市場と捉えることもできます。進出にかける労力が比較的わずかで済むことも踏まえれば(英語のまま進出できる国は特に)、ゲームデベロッパーならば東南アジアへの進出に乗り出すべきでしょう。


著者: 林 宣多(はやし・のりかず)
AppLovin日本法人代表取締役。GREE、Yahoo! Japanでの広告プロダクト立ち上げ後、米国に拠点を移し、設立直後のAppLovinに参画する。AppLovin本社の営業責任者として事業の成長をけん引した後、2016年4月にAppLovin日本法人の代表取締役に就任する。
《林 宣多》

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