あまり語られないエンジニアにおけるゲーム運営ノウハウ | GameBusiness.jp

あまり語られないエンジニアにおけるゲーム運営ノウハウ

GameBusiness.jpをご覧のみなさま。DeNA Games Tokyo(以下DGT)の技術部部長の平岡洋祐です。今回は「エンジニアにおけるゲーム運営ノウハウ」についてお話させていただきます。

ゲーム開発 インディー
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GameBusiness.jpをご覧のみなさま。DeNA Games Tokyo(以下DGT)の技術部部長の平岡洋祐です。今回は「エンジニアにおけるゲーム運営ノウハウ」についてお話させていただきます。

◆そもそもゲーム運営のノウハウは、プランナー目線のものが多い


ゲーム運営のノウハウとして、メディアやイベントで発信される多くのものは、「いかにプレイヤーの潜在的/顕在的なニーズを捉えて、それを上回っていくか」という観点のものが多いように感じます。

このノウハウを実行するためには、プレイヤーの行動をデータで取得し、定量的に落とし込み、「こういう体験を作りたい」という状態を定義し、そこに向うための施策を検討することが多いでしょう。

つまり、ゲーム運営という枠組みの中で話されるノウハウは、プロデューサーやディレクター、プランナー目線のものが多いのです。

ですが、ゲーム運営を続けていく中で、エンジニアにも蓄積されるノウハウがあります。

◆ゲーム運営の中で蓄積されるエンジニアのノウハウとは?


エンジニアに蓄積されるノウハウは、以下の3つの観点に多いと考えています。


■1.長期運営の観点
ゲームの初期フェーズでは、長期運営を考えられていないことが多いです。なぜなら、リリース前やサービス初期の段階では、数年後よりも、まずはゲームをヒットさせることに集中するからです。もちろん数年先について、まったく考えてないわけではありません。ヒットさせない限り、数年後のゲーム運営はないので、優先度の問題でそうなることが多いのです。

しかし、この状態のまま長期でゲーム運営をしていくと必ず「ボロ」が出てきます。例えば、ある時期にゲームをはじめた人のアクティビティだけが異常に高かったり低かったりしたとします。調査すると、そこにはリバランスする仕組みがなかった、といったことなどが原因の一つでした。

長期的にゲーム運営をしていく中で起こるであろうプレイヤーの動きの違いなどは、初期の設計では考慮されていないことが多いでしょう。長期運営をすることでしか、見えにくい観点はいくつもあるのです。

■2.変化対応の観点
長く運営をしていると、最初は5個程度の機能だったものが10や20と増えていきます。その中で「Aの機能から派生したBの機能」といった構造が生まれてきます。

適切に粒度を分けず、全てを並列の概念として続けていくと、最初の設計の前提にあった状態とのずれが大きくなり、メンテナンスコストが増えていきます。

このようなときは、「Aという機能群という大きな括りの中のBという機能、Cという機能」のような整理を行い、そもそも機能を作り変えることで、変化に対応していきます。

■3.効率化の観点
ゲーム運営を続けていくと、基本的には機能が増えていきます。その状態で何も対策を打たなければ、「同じゲームシステムのイベントをリリースする」のにかかるコストは増えるばかりです。

リリース直後の拡大フェーズであれば、そのコストを、人員を増員し解消することもあります。ですが、安定運営フェーズに入ったタイトルでは、そういうジャッジはされません(効率化や育成のためなど、別の目的での増員はあります)。

ですので、運営フェーズに入った状態では、常にゲームを面白くする対応と、効率的に少人数で回す対応の両方を求められます。

この状況下で2つのバランスをどう取るのか。効率化するとしてどういう風に効率化するのか。こういった効率化に関する工夫も、数多くのタイトルを経験する中で、ノウハウとして蓄えられていきます。

◆どうやってノウハウとして引き継ぐのか


蓄積されたノウハウの引き継ぎ方は、大きく分けて、「人」と「プロダクト」だと思います。


■人=人から人への伝達
具体的にいうと「人から人への伝達」です。
これは口頭でなされることもありますし、コードレビューという形で伝わるものもあります。一般的にあまりいい方法とはされてないように感じますが、実態としては一番多いでしょう。

人から人への伝達で最も重要なのが「考え方」の引き継ぎです。もちろん「これはやっていい」「これはやってはいけない」という具体例を交えた引き継ぎも行います。ですが、1つの事象に対しての具体例を引き継いでも少し異なる事象が起こった時に対応できないでしょう。

ですので、この引き継ぎでは、「なぜこれはやっていいのか」「なぜこれはやってはいけないのか」という考え方に当たる部分を重要視して行っています。

■プロダクト
プロダクトには工夫そのものが詰まっています。アーキテクチャーそのもの、ディレクトリの切り方、変数の付け方、クラスの分け方、など。それぞれに「なぜそうしているか」という意味があります(たまにそうではないものもありますが)。

それを読み解き、「なぜそうしているのか」を理解すれば、ある程度は前任者の思想を引き継げるものになるので、この引き継ぎ方も有効です。

■これも立派なエンジニアのノウハウ


長期に渡ってゲーム運営していると、多くの問題が発生していきます。それは、初期品質によるものもや、運営していく中で起こることなど様々です。

こういった問題の解決法やノウハウは、新しい技術トピックなどではあまり語られないものではありますが、立派なエンジニアリングのノウハウだと考えています。

DeNA Games Tokyoは、新しい技術だけではなく、ゲーム運営のエンジニアリングのノウハウについても、さらなる高みに到達すべく取り組んでまいります。

以上、今回はエンジニアにおけるゲーム運営のノウハウについて紹介させていただきました。この記事を読んでいただけた方に何か感じてもらえたら幸いでございます。

■平岡 洋祐 プロフィール
株式会社 DeNA Games Tokyo 技術部 部長
2011年、DeNA入社。アプリゲーム、ブラウザゲームのエンジニアを経て、2014年よりリードエンジニアとして新規タイトルの開発に携わる。その後、複数のブラウザゲーム開発に携わりながらグループリーダーを担当。2017年、DeNA Games Tokyo(http://denagames-tokyo.jp/)の技術部 部長に就任。
《平岡洋祐》

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