日本と中国のモバイルゲーム市場を結び付けたい―― 急成長を続けるMobvistaの新たな挑戦 | GameBusiness.jp

日本と中国のモバイルゲーム市場を結び付けたい―― 急成長を続けるMobvistaの新たな挑戦

中国のモバイルゲーム市場は、現状どのようになっているのか?また、日本が中国にモバイルゲームを展開しようと思ったらどのような課題が発生しうるのか?中国・広州に本社を構えるMobvistaで日本のカントリーマネージャーを務める、井料武志氏にお話をうかがいました。

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モバイルゲームとPCゲームが市場を大きく牽引し、2020年には300億ドル(約3.3兆円)にも達すると見られる中国ゲーム市場。世界最大のゲーム市場でありながら、2014年まで海外ゲーム機の流通が禁止されていたり、今も中国でAndroid版のゲームをリリースするには政府の審査を受けなければならなかったりと、ひと筋縄ではいかない市場でもあります。

そんな中国のモバイルゲーム市場は、現状どのようになっているのか?また、日本が中国にモバイルゲームを展開しようと思ったらどのような課題が発生しうるのか?中国・広州に本社を構えるアドテク企業・Mobvistaで日本のカントリーマネージャーを務める、井料武志氏にお話をうかがいました。
(聞き手:宮崎紘輔)

――井料さんのキャリアは新聞社からスタートされたそうですね。

井料新卒としてキャリアをスタートした産経新聞社で2000年まで勤務していました。2000年というとインターネットの波で時代が大きく動こうとしている頃で、どうせならイチから何かを立ち上げる仕事につきたいという思いが、日に日に強くなっていました。ちょうどその頃、リクルートが生活情報サイト「オールアバウト」を立ち上げるということでジョインし、2006年まではオールアバウトに勤めました。営業を経て大阪の営業所を立ち上げるにいたり、社の上場に貢献できたと思っています。

その後も楽天など複数の企業で広告営業部隊を率いていたのですが、2017年に、これまでの知見を生かしながら新たなチャレンジができる企業として中国企業のMobvistaの日本法人の立ち上げをすることにしました。。北京支社には日本向けの業務を担当している部署があり、日本法人でも人員を拡大し、事業をドライブさせたいと考えています。

――Mobvistaとはどのような企業なのでしょうか。

井料2013年に中国で創業したアドテク企業です。アドネットワークの売り上げの約6割は海外で、世界各国で着実に広告主を増やし、国際的なビジネスで伸びている企業です。日本での広告在庫もあり、たとえばモバイル用カメラアプリの『Camera360』や『ビューティプラス』の広告枠などを直在庫として取り扱っています。

クライアントの比重はそうしたライフスタイル系のアプリメーカーとゲームメーカーで半々というところで、国内の主要ゲームメーカーともすでに厚いお取り引きがあります。

――今回、日本の広告主向けに中国進出をテーマにしたホワイトペーパーを発表されましたよね。非常にボリューミーかつ、細かいデータで非常に勉強になりました。こうした資料をリリースした理由を教えて下さい。

井料中国市場をもっと開かれたものにして、海外の市場とつないでいきたいという思いがあるからです。たとえば、ツール系のアプリで、中国市場で成功している海外企業というのは非常に少ないのですが、一方でスマホゲームは海外企業のチャレンジが盛んです。最近では、カエルが気ままに旅をする様子を見守るカジュアルなモバイルゲーム『旅かえる』がスマッシュヒットとなりました。

中国市場で大ヒットを収めた『旅かえる』(画像はApp Storeの詳細ページより)


『旅かえる』の事例もそうですが、日本のスマホゲームには、とても大きな可能性があると思っており、弊社で中国市場でも成功できるように支援をできればと考えているんです。どのレベルでどこまでサポートさせていただくかはケースバイケースですが、その第一歩として、中国マーケットの実情をまとめさせていただいたのが、先日のペーパーになります。

――では、中国のスマホゲーム市場はどのような規模になっているのでしょうか。

井料規模は160億ドル超の規模です。シェアの比率はAndroidが約86%、iOSが約14%となっています。数字だけ見ればAndroid対応でリリースすることが重要になりそうですが、私どもとしては「まずはiOSでリリースしてみてはいかがでしょうか」とご提案させていただいています。

――それはなぜでしょうか。

井料iOS対応アプリは、ローカライズさえすれば、あとはApp Storeの管理画面でチェックボックスをオンにするだけですぐリリースできるからです。ところが、Android対応アプリはリリースに政府の許可を得なければならないので大変なんです。現地のパブリッシャーの協力を得ておきたいところです。

さらに、そこをクリアできても、AndroidのマーケティングはBAT(Baidu、Alibaba、Tencent GDTという3大大手企業の頭文字をつなげた語)がアドネットワークでガッチリ押さえています。それをCPC(Cost Per Click。クリック数に対して課金する広告のこと。クリック単価とも)で買い付けなければいけないので、採算が取りづらいのです。

ですので、まずはiOS版でリリースし、結果が出たらAndroid版に広めていくという流れをお勧めしています。シェアが14%というと少なく感じるかもしれませんが、中国の人口から考えればiOS版だけでもパイは1億人近くになるので、十分に魅力的なマーケットだと思います。

――中国でスマホゲームを遊ぶユーザーはどのような人たちなのでしょうか。

井料ゲームへの課金に対して、日本のユーザーほど抵抗を持っていないように思います。その理由は、彼らにコンソールゲームで遊ぶという文化がほとんどなかったからではないかと思います。2000年代はオンラインゲームが台頭していて、インターネットカフェでそれを遊ぶのが日常の光景でした。個人でゲーム機(≒スマートフォン)を持つ人が増えてきたのはつい最近、2010年以降ではないでしょうか。

――だから"買い切り"という概念になじみがなく、課金に抵抗が出づらいのではないか…ということですね。

井料メッセージアプリのWeChat(ウィーチャット)で使用できるWeChatペイなど、モバイルペイメントが日本よりも普及しているのも、理由として挙げられると思います。本当にサッと払えますからね。

――今、中国のモバイルゲーム市場ではどのようなゲームが流行っていますか?

井料本格的なゲームをずっと遊んできてお腹がいっぱいになってきたのか、最近はカジュアルなゲームのヒットも見かけるようになりました。先ほど挙げたWeChatにも、HTML5で手軽に遊べるカジュアルゲームがあって、人気を博しています。前述の『旅かえる』がヒットしたのは、それまでの中国モバイルゲームにない切り口や世界観が斬新だったというのはもちろんありますが、こうした側面もあってのことかもしれません。また、リラックマなんかも中国で人気が出ているんですよ。日本ならではのかわいく、親しみやすいキャラクターが受ける土壌はあるといえます。

日本ならではのかわいらしいキャラクターは中国でも受け入れられる、と井料氏


――日本のスマホゲームはガチャがメインの柱で、課金をためらわない少数のプレイヤーが収益を支えているという構造になっています。一方で、ガチャをはじめとするルートボックス問題は今世界中で是非が論じられており、否定的な捉え方の方が多いようにも見受けられます。中国のモバイルゲーム市場では、こうした要素はどのように捉えられているのでしょうか。

井料中国にも「ゲームの収益をグンと押し上げる少数のユーザー」はいますが、日本ほどガチャに加熱している感はなさそうです。といいますのも、日本と比べると、中国のモバイルゲーム市場は広告でマネタイズするモデルが成り立っていますので、ガチャに頼らずとも大きな収益を生むことがあるからです。

中国では、あるゲームに、それと露骨に競合するゲームの広告が入っていても気にしないくらいですから、広告に対する考え方も日本とは異なるといえるかもしれません。あちらから見ればむしろ「日本はなぜユーザーからの課金メインであそこまで大きな市場を維持できているのだろう」と思っているのではないでしょうか。

また、ビュースルーコンバージョン(表示された広告をクリックしなかったユーザーが、後日別のルートで広告先にたどりついた数のこと。広告の間接的効果を図る指標となる)を重視しており、動画広告もよく見受けられます。モバイルゲームですと、たとえばプレイアブルアドですね。動画広告の中で、実際に操作してゲームの一部を体験できるというものです。

中国はインターネットをする際にPCかスマホかという選択肢がほぼありません。ネットに接続する端末という意味では、それくらいにスマホ一強です。アドネットワークのような、動画で見せる広告が強いのは、そうした理由もあるでしょう。

――日本のゲームメーカーがMobvistaと組んだときのメリットを端的に挙げるなら、どのようなものになりますか?

井料弊社は世界各地でアドネットワークを構築しており、中国市場向けでも『Camera360』などのライフスタイル系アプリに加え、多数のカジュアルゲームでの広告在庫を用意しております。

また、現地の法人と組んだ際、日本企業の感覚で立てたスケジュール通りに彼らを動かすのはひと筋縄ではいきません。あちらはあちらで「海外の企業は細かいリクエストが多いなぁ」とボヤいているかもしれません(苦笑)。そんなときも、私どもがうまく間に立ち、現地でしっかり手綱をにぎります。これは本社を中国に構える弊社ならではの強みです。

――アドテクという単語からは想像しづらい、充実のサポートですね。

井料中国市場は、人治と言ってしまっては極端にすぎますが、人とのつながりが大きく明暗を分けます。誰の、どこの協力を得て、どのように地盤を固め、どう根回しするか……そうした要素がとても大切で、海外から参入してきた企業はそこに面食らったり、苦戦したりすることが多いです。

Mobvistaは中国に本社を構えながら海外の文化へのリスペクトを忘れず「グローバルに成功を収めた中国企業」という夢に向かって日々邁進している企業です。日本のモバイルゲームが持つポテンシャルは極めて高く、また、日本人と中国人のコンテンツに対する感性も親和性が高いと確信しておりますので、両者を結び付けるお手伝いができればと思っています。
《蚩尤》

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