世界一の売上を記録した『FGO』3年間の軌跡を3つの物語から読み解く【CEDEC2018】 | GameBusiness.jp

世界一の売上を記録した『FGO』3年間の軌跡を3つの物語から読み解く【CEDEC2018】

ゲーム開発者向け技術交流会「CEDEC2018」において、「ディライトワークス、FGO PROJECTをプロデュースする。~ Fate/Grand Order 成長の軌跡 2015-2018 ~」のセッションが開催されました。

ゲーム開発 プロデュース

庄司社長、塩川P、石倉氏が登壇!世界一の売上を記録した『FGO』3年間の軌跡を3つの物語から読み解く【CEDEC2018】
庄司社長、塩川P、石倉氏が登壇!世界一の売上を記録した『FGO』3年間の軌跡を3つの物語から読み解く【CEDEC2018】 全 28 枚 拡大写真
大人気スマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order(以下、FGO)』を開発・運営するディライトワークスは8月23日、パシフィコ横浜の会議センター(横浜市西区みなとみらい)で開催中のゲーム開発者向け技術交流会「CEDEC2018」において、「ディライトワークス、FGO PROJECTをプロデュースする。~ Fate/Grand Order 成長の軌跡 2015-2018 ~」のセッションを開催しました。


代表取締役社長の庄司顕仁氏、執行役員クリエイティブオフィサー兼「FGO PROJECT」クリエイティブプロデューサー の塩川洋介氏、執行役員マーケティング部長の石倉正啓氏の3人が登壇。『FGO』の配信開始前(2015年)、配信開始後(2016年~2017年)、現在(2018年)の時系列ごとに、3つのプロデュースエピソードを紹介しました。

「それは、自らを知る物語。」庄司顕仁氏/『FGO』の配信開始前(2015年)


庄司顕仁氏

TYPE-MOON から相談されたのが全ての始まり
庄司氏が語ったのは、『FGO』プロデュースの立ち上がりと初期のプロデュースワーク。2013年10月に、今では同ゲームの原作を担当するTYPE-MOON代表の武内崇氏に、ひな形となる企画書の相談を持ちかけられたことが始まりでした。


TYPE-MOON開発の『Fate/stay night』を始めとする『Fate』シリーズの世界観を元にしているのが『FGO』。アニプレックスの呼びかけから生まれた『Fate』シリーズのソーシャルネットゲーム化(スマートフォン向け)の最初の企画案は、『Fate』シリーズのシナリオを担当する奈須きのこ氏が多忙を極めているため、負担がないようにシナリオ的要素がほとんどない内容だったそうです。

「相談された立場として企画書に目を通したところ、当時のソーシャルネットゲームのトレンドがしっかり抑えられていて、とくにこれと言って穴はなかった」と振り返った庄司氏。しかし、武内氏がしっくりこないのを見て、「少し勉強する時間をください」と先送りしました。

コンテンツの魅力に対して売上げがともなっていないと感じた


『Fate』シリーズの過去の売上げに目を通し、実際に作品に触れた庄司氏は「コンテンツパワーに販売実績が追いついていないのではないか?」と感じたとのこと。様々な原因を考え、TYPE-MOONにも疑問を伝えたところ、「『Fate』は、超ニッチでコア向け」「狭い層に深く刺さる深淵のタイトル」「コアファンは、恐らく10万人くらい」と言った答えが返って来たそうです。


しかし、「きっかけさえあれば『Fate』が“生涯の1本”になる人は世の中にもっとたくさんいるはずでは?」と思った庄司氏は、「『Fate』シリーズを新たなステージに進めるべきだ」と提案。ゼロベースからソーシャルネットゲームの企画を再構築することになりました。


全員で話し合い、「最も新しく、最も手に取りやすく、しかしながら、最も『Fate』らしい100万人に届く新たな『Fate』を創る」がゴールとして定まった際、“『Fate』らしさ”とは何なのかということを突き詰めたところ、「素晴らしいシナリオを生み出す奈須きのこ」という存在こそが不可欠だという結論に改めて気づくに至ります。そうして、当初の企画案とは全く異なる奈須きのこ氏がシナリオに大きく関わる『FGO』が動き出したわけです。

知人者智、自知者明


「プロデュースとはクリエイターの想いや才能をビジネスとして成立させること」「クリエイターの生み出す作品をすべての潜在ファンに届けること」だとまとめた庄司氏。「知人者智、自知者明」(人を智る者は知なり、自らを知る者は明なり)という中国の言葉を例に出し、「まだ先にある自分の限界を知らずに『これでいい』と妥協してしまうのはもったいない」としめくくりました。

「それは、自らを取り戻す物語。」塩川洋介氏/『FGO』配信開始後(2016年)


塩川洋介氏

誰もが道を見失いながら必死にもがいていた
同ゲームの配信開始から2018年まで開発責任者を担当した塩川氏。参加したばかりの配信開始間もない2016年当時は、「奇跡の18分」「奇跡の2分」と今も語りぐさになるほど、メンテナンスが多くて実際のプレイ時間が少なかった試行錯誤を繰り返す状況でした。


当時を振り返った塩川氏は、「誰もが道を見失いながら必死にもがいていた」状況で、「大元の火を止めずに小火の火消しに奔走していた毎日だった」と例えました。もう一度『FGO』を再定義する必要があると考えた塩川氏は、5つの定義を全スタッフに伝えて事態改善に動き出します。


「“脱”予定調和な体験を提供し続けるゲームである」
「“事件”を巻き起こす」ことが不可欠だと考え、ユーザーを驚かせる数々の施策を打ち出します。その後、『FGO』に関わるワードが幾度となくTwitterトレンド入りするなど、ユーザーをあっと驚かせる仕掛けを一番届く形で情報発信してきた成果が多く出ています。

「スマホソシャゲの皮を被った、昔ながらのゲームである」
大きな改革として「ソーシャルネットゲームの当たり前を見直す」ことを掲げた塩川さん。当時は、「画面タップ何回で」「何分経ったら」すぐにバトルが始まらないといけないトレンドがありましたが、塩川氏は「『FGO』はシナリオで魅せるゲームだからこそ、ライターの方々には気にせずどれだけ長くなっても良いから書いて下さい」と伝えたそうです。

「何よりもFateらしくあることを優先するゲームである」
「英霊は全員が主役」であるとし、低レアサーヴァントであったとしても、高レアサーヴァントと同じように予算と工数を掛け、ていねいに作りあげてきました。後にゲーム中の「聖杯」というアイテムを使うことで低レアサーヴァントを強化できるなど、ユーザーが愛情を注ぎ込める施策も多くの人に喜ばれました。

「自分自身との戦いを楽しむゲームである」
「自己満足を突き詰める」ために、当時は実装案に上がったユーザー同士の対戦要素は思いきって無しにすることを決意。後に、違うコンセプトでユーザー同士が戦える『FGO』のアーケード版が開発されたことから、しっかりした差別化にも繋がっています。

「『FGO』ユーザーのためのゲームである」
新規ユーザーを囲い込むために、他作品とのコラボイベントはソーシャルネットゲームの定番ですが、『FGO』を遊んでくれるユーザーが喜ぶ施策だけに限定。今日までコラボイベントは、『Fate』シリーズの作品のみとなっており、世界観が好きなユーザーほど喜ぶ仕掛けになっています。

再定義した『FGO』で開発・運営を行った結果
平均の月間アクセスリリース当初の2015年から2016年は約1.4倍、2017年は約2.6倍、2018年もすでに2017年を上回る数字が出ています。さらに平均月別売上も2015年から2016年にかけて約2.2倍に、2017年は5.3倍に、2018年はすでに上回り、アプリゲームとして第1四半期、世界一位の収益を出すなど成長し続けている結果になりました。




最後に「自分らしさ以外を切り捨てる優先度づけ」がプロデュースの秘訣だと語った塩川氏。「とてつもない勇気」が必要で「『FGO』らしさを取り戻し、そして、『FGO』らしくあり続けた“愛”と“勇気”の物語」だったと締めくくりました。

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《乃木章@インサイド》

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