KADOKAWAはアニメ発のゲーム開発でヒットの再現性を高められるか【ゲーム企業の決算を読む】 | GameBusiness.jp

KADOKAWAはアニメ発のゲーム開発でヒットの再現性を高められるか【ゲーム企業の決算を読む】

業績不振で立ち往生していたKADOKAWAが見事な復活を遂げました。

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業績不振で立ち往生していたKADOKAWAが見事な復活を遂げました。

2023年3月期の売上高は前期比15.5%増の2,554億2,900万円、営業利益は同40.0%増の259億3,100万円となりました。営業利益率は10.2%。経営統合したドワンゴの不調で一時営業利益率は1%台で推移していましたが、社長が川上量生氏から松原眞樹氏、夏野剛氏へと変わって大復活しました。

業績の伸張に一役も二役も買っているのがゲーム事業。子会社フロム・ソフトウェアが2022年2月25日世に送り出した『ELDEN RING』が、売上2,000万本を突破するという異例のヒットを記録しています。

今後のKADOKAWAのポイントは、ヒット作に再現性を持たせられるかどうか。そして特定のタイトルのヒットに左右されずに、中長期的な収益力を持たせられるかどうかです。その課題解決に向けた取り組みの片鱗が見えてきました。

本業への経営資源の集中で業績の立て直しに成功

決算短信より

川上氏が社長を務めていた2018年3月期、2019年3月期は2期連続で営業利益率が1%台と低迷していました。KADOKAWA(ドワンゴ)は2018年11月にRPGと位置情報を盛り込んだゲーム『テクテクテクテク』をリリースしました。期待値の高いゲームでしたが、これが大失敗。課金による売上高を伸ばすことができずに、KADOKAWAは2019年3月期にこのゲームの減損損失を含む37億9,900万円の特別損失を計上し、大幅な下方修正を迫られることになります。

2019年2月に川上氏の社長退任を発表しますが、ちょうど下方修正発表のタイミングでした。業績悪化による引責辞任と見て間違いないでしょう。

川上氏の社長退任と同時にKADOKAWAの取締役に就任した夏野氏は、後に社長へと昇格します。夏野氏はユーザー離れが加速していたニコニコ動画の再建には力を入れず、主力の出版とアニメなどの映像分野に経営資源を集中。立て直しに成功しました。

KADOKAWAは売上高の半分以上を出版に依存しています。得意とするライトノベルはメディアミックスがしやすく、IPを育てて会社を成長させる上で極めて重要な役割を担っています。

夏野氏は電子書籍事業の拡大に注力する一方、編集者獲得にも投資をしてIP創出を促進。アニメにおいては、中国攻略の足掛かりとしてテンセントと資本提携するなど、海外市場の開拓を行いました。

売上構成比率1割のゲーム事業が会社全体の営業利益の半分以上を獲得

『ELDEN RING』が異例の大ヒットとなったKADOKAWAですが、2023年3月期のゲーム事業の売上高は303億5,100万円で、売上構成比率は11.9%ほどしかありません。驚くべきは、営業利益が前年同期の2.7倍となる142億1,800万円に跳ね上がったことです。会社の営業利益全体の54.8%に相当する金額を稼ぎました。

決算説明資料より

ゲーム事業の営業利益率は46.8%にも上ります。

この現象と非常によく似ているのが、『ウマ娘 プリティーダービー』を大ヒットさせたサイバーエージェントの業績。2021年9月期のゲーム事業の売上高は前期比68.6%増の2,627億5,100万円、営業利益は同2.2倍の964億4,500万円で、営業利益率は36.7%となりました。

しかし翌2022年9月期、サイバーエージェントのゲーム事業における売上高は前年同期比13.1%減の2,283億8,700万円、営業利益は同37.2%減の605億3,100万円でした。大幅な減収減益に見舞われています。

KADOKAWAのゲーム事業も2024年3月期は減収減益を見込んでおり、売上高は29.5%、営業利益は66.9%減少する見込みです。

しかし、この2社の株価の動きは全く異なります。サイバーエージェントは失望売りが加速した一方、KADOKAWAは決算発表後も堅調に推移しています。


《不破聡》

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