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「ストリートファイターリーグ」とともに世界へ―プロリーグのトップパートナーを務める太陽ホールディングスの挑戦

太陽ホールディングスが「ストリートファイターリーグ」への協賛を通じて得た手応えとプロeスポーツ選手への思いとは。

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「ストリートファイターリーグ」とともに世界へ―プロリーグのトップパートナーを務める太陽ホールディングスの挑戦
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2022年1月29日に開催された、カプコンが主催する『ストリートファイター』シリーズにおける日本最高峰のeスポーツリーグ「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2021」の決勝戦。栄冠に輝いた優勝チームには、太陽ホールディングス 執行役員 最高ブランディング責任者 吉野由季子氏の手で賞金500万円が授与されました。

©CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

同社は今日にいたるまで「ストリートファイターリーグ: Pro-JP」のスポンサーを継続しており、『ストリートファイター6』を採用した2023年7月開幕の「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2023」ではトップパートナーを務めています。

エレクトロニクス事業を展開する同社は、スマートフォンやPCに必ず用いられるソルダーレジスト(プリント基板などの回路パターンを保護する、緑色の絶縁インキ)を主力製品とする化学メーカーです。ゲーム業界と切っても切れない関係にある企業ではありますが、eスポーツにここまで熱い視線を注ぐ狙いとは?吉野氏に話をうかがいました。

(取材:森元行、蚩尤 執筆:蚩尤 画像提供:カプコン、太陽ホールディングス 編集:多賀秀明)

アメリカに大きな魅力を感じ高校1年生で渡米

――まずは吉野氏の簡単な経歴をお聞かせください。

吉野由季子氏(以下、吉野)小学5年生の時、バーを経営しているアメリカ人の方と家族ぐるみでお付き合いがあり、当時は毎週末のようにその人に連れられて家族で横田基地へと遊びに行っていました。

ゲートをくぐると、私の家と同じ日本であるはずなのに、まるで別世界のようでした。その衝撃で「アメリカへ行きたい!」という気持ちが芽生え、親を説得して高校1年生の時に1人で渡米しました。

その後、ニューヨーク工科大学に進学して3Dコンピューターグラフィックスやブランディングを学びました。

――行動力にあふれた学生時代だったのですね。

吉野今はゲームクリエイターの方々とお仕事でご一緒させていただくこともありますが、何かが違っていたら、私自身もそちら側(クリエイター畑)の人間になっていたかもしれません(笑)。

その後は2002年に帰国して外資系の医療機器メーカーに就職し、18年ほど医療業界でマーケティングやブランディングに携わり、前職では日本法人のCOOも務めました。そして「そろそろ他の業界のことも知ってみたい」と考えるようになって出会ったのが太陽ホールディングスで、2020年4月にジョインしました。

――入社後はどのような仕事をされていましたか?

吉野太陽ホールディングスには社長付のポジションで入社しました。当社は、ユニークな企業で、入社しても最初の数カ月間は役職がないのです。この時期に、グループ含め色々な事業の現場を見て「ここで何をしたいのかを、自分の目で見て学んで決めてほしい」と。

それまでの経験も踏まえて「もっとブランディングに力を入れてはどうでしょうか」と提案してチームを立ち上げ、チーフブランディングオフィサー(最高ブランディング責任者)に就任しました。

――太陽ホールディングスも医療・医薬品事業を展開しておられますよね。そちらへのご興味は。

吉野医療業界から離れてみたいと思って始めた転職でしたが、当社で期せずして再会を果たしました(笑)。現在は、医療・医薬品事業を展開する子会社(太陽ファルマ/太陽ファルマテック)にも携わっており、切っても切れない縁があるのだなと実感しています。

eスポーツ選手とスポーツ選手の間には何の違いもない

――今も話に挙がりましたが、御社はさまざまな事業を展開しています。太陽ホールディングスの事業について簡単にお聞かせください。

吉野当社はエレクトロニクス事業医療・医薬品事業エネルギー事業食糧事業などを展開しており、主要事業となるエレクトロニクス分野では、プリント基板を保護するソルダーレジストなどの化学品の製造・販売を業界に向けて行い、ソルダーレジストでは世界トップシェアを誇っています。

エレクトロニクスは特にアジアが強く、アメリカほか世界各国で展開中です。自動車など安全性が必要とされる製品にも使用されるため、品質には常に大きな責任感が求められます。

化学をベースに、医療・医薬品事業にも携わっています。また、地域貢献の意味も込めて、本拠地である埼玉県比企郡嵐山町では農業などの食糧事業も展開中です。

――ありがとうございます。それではそろそろ、本題に入らせていただきます。太陽ホールディングスには2020年に入社されたということですが、入社間もない頃に「ストリートファイターリーグ(以下、SFL)」への協賛に着手されていますよね。

吉野そうですね、入社と同時に始めたのがこの協賛でした。

――協賛の目的や経緯はどのようなものだったのでしょう。

吉野目的はもちろんブランディング―太陽ホールディングスを1人でも多くの方に知っていただくことです。そして、それを最大化するためにはどのマーケットを選択すればよいか?

――そこまでは、どこの企業でも日常的に行われているアプローチだと思います。

吉野そうですよね。では、私たちがeスポーツ業界を選んだ理由とはなにか。ひとつは、「eスポーツが持つマーケットは現時点ですでに十分大きいだけでなく、今後も国内のみならず海外でも大きくなり続ける余地がある」こと。これは当社のビジネスに近いものを感じました。

そしてもうひとつは、「eスポーツ選手は単なるゲームプレイヤーではなく、プロのスポーツ選手である」と感じたことです。

当社はプロバドミントン選手の奥原希望選手や、スケートボード・男子パークの永原悠路選手など、プロスポーツ選手とスポンサー契約を結んでいます。その理由は、常に挑戦や練習を続けるプロ選手が「楽しい世界は、楽しむ人がつくりだす。」という当社のブランドステートメントに込めたメッセージと重なるからです。

eスポーツのプロ選手も、その気持ちや熱意はスポーツ選手とまったく同じものだからこそ、当社と同じように日本から世界へ羽ばたこうとしている『ストリートファイター』の競技シーンを応援したいという考えにいたりました。

ゲームのファンから名指しで感謝される、eスポーツスポンサー独特の現象

――実際に協賛してみて、どのような実感を得られましたか。

吉野SFLは他言語でもオンライン中継が行われていたり、世界の他地域でもリーグが行われているので、想像していた通り、とても大きなマーケットであることをあらためて実感しました。

リーグが開幕すると、視聴者の方たちが中継を見ながら「太陽ホールディングスさん、今年も(スポンサーをしてくれて)ありがとう!」とチャットで言ってくれるんですよ。

なかには、「SFL: Pro-JP 2021」の決勝戦で私が優勝チームに賞金を手渡ししたのを覚えていて、私の名前を認識してくださってくれている方もいたりして……。スポンサーとひと言にいってもさまざまなアプローチがありますが、こんなにも身近で、直接の謝意を向けてもらえることはそうそうありません。これはeスポーツ独特の現象だと思います。

その影響で、TwitterなどのSNSアカウントへのエンゲージメントや、HPへのアクセス数にも顕著な広告効果が見られるようになりました。

――「SFL」をスポンサーするにあたって、カプコンとはどのようなやりとりをされるのでしょうか。

吉野広告代理店を通してのやりとりだけでなく、カプコンの各担当者の皆様とも直接「リーグをどのようにして盛り上げていくか」を相談させていただくことがあります。

――カプコンが吉田沙保里さんを起用した、「『ストリートファイター6』の屈強なキャラクターたちをどのように倒すか」の指南動画公開は、大きな話題を呼びましたね。それでは、苦労させられた面などは。

吉野取り組みを始めたばかりの頃は、eスポーツとは縁遠い社内の方たちから「なぜeスポーツなの?」と聞かれることが多かったのですが、マーケットとしての大きさや、これも「プロの選手としてスポーツを極めている人達へのサポート」であることを伝えることで理解を得られました。

そうした社内調整はありましたが、これも苦労というほどではありませんでしたね。

――「SFL」で実現したい、喫緊の目標などはありますか。

吉野2022年から世界大会もスポンサーしていますので、世界大会で優勝に輝いたチームにも私が賞金を渡せたらいいですね。『ストリートファイター6』を愛する1人でも多くの方たちに、太陽ホールディングスの名を覚えていただけるように取り組みを続けます。


ブランディングの秘訣は会社としての軸を理解し、ブレないこと

――ブランディングやPRはうまく事が運んでもすぐに結果が出るものではないと思いますが、今のeスポーツへの取り組みの先に見据えているものは何ですか。

吉野「SFL」をきっかけに太陽ホールディングスの名を知った方が将来当社に来てくれるならそれは大きな利点ですが、必ずしもそれだけではないと思っています。

たとえば、5年後、10年後に社会へと羽ばたいた方たちが「そういえば、太陽ホールディングスというおもしろい会社があったな」と思い出して、より楽しい世界を作り出すために手を取り合えるなら、それがベストかなと。

今はそんな未来のために、1人でも多くの方に太陽ホールディングスの社名と強み、特色を知っていただくことに邁進しようと思います。

――ありがとうございます。それでは最後に、吉野氏が入社したばかりの頃の御社と同じように、eスポーツへ可能性を感じている各企業の担当者へのアドバイスをお願いします。

吉野eスポーツのマーケットは本当に大きく、PRするのにはうってつけといえます。そして、実際に参入する際はブランディングに欠かせないステートメントを設定してください。そこがブレていると「参入するにしても、どのゲームタイトルがよいだろう」というようにあやふやになってしまいます。

eスポーツ業界への参入に限らずPR活動全般にいえますが、軸となるメッセージを用意し、そこからブレないことが大切です。そうあるからこそ、社内の協力や理解が速やかに得られ、そのメッセージがターゲットに届きます。

また、いざスポンサーするタイトルが決まっても、広告代理店に頼りきりになるのは厳禁です。当社もカプコン様とやりとりをする際は間に広告代理店が入っていますが、「こんな施策がいいですよ」と提案されても、安易な即答はせず、その都度検討しています。

eスポーツ選手のみなさんがそうであるように、常に考え、挑戦し続ける姿勢が大切です。


取材:森元行,取材:蚩尤,執筆:蚩尤,編集:多賀秀明》

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