Unity、ゲーム開発者に対し不評の新料金体系が「自社広告サービス採用で免除」されると提案か | GameBusiness.jp

Unity、ゲーム開発者に対し不評の新料金体系が「自社広告サービス採用で免除」されると提案か

ゲームエンジン『Unity』が突如、従来の定額料金に加えて「ゲームがインストールされるごとに追加ライセンス料を徴収」する仕組みの新料金体系「Unity Runtime Fee」を発表し、業界に波紋を呼んでいます。

企業動向 戦略
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ゲームエンジンのUnity Technologiesが突如、従来の定額料金に加えて「ゲームがインストールされるごとに追加ライセンス料を徴収」する仕組みの新料金体系「Unity Runtime Fee」を発表し、業界に波紋を呼んでいます。

Unityはこれまで、デベロッパーに対しては収益規模に応じた月額制(または年額制)プランを提供してきました。しかし、Unityが今回発表した「Runtime Fee」では、ゲームからの収益が一定基準(Personalの場合、月額20万ドルまたは20万インストール)を超えた場合に、1インストールごとに追加のインストール料を徴収することが示されました。

これはつまり、Unityを使ってゲームを使った場合、それが大ヒットすればするほど、Unityからの料金請求も膨れ上がっていくことを意味します。

しかも、インストール料金はユーザーが購入したゲームを複数のデバイスにインストールした場合、インストールした数に応じて発生するとされ、たとえばユーザーが購入したゲームを、同一アカウントを使うスマホと2台のタブレットにインストールすれば、それだけで3台分の追加料金が発生する可能性があります。

一方、発表当初に議論になった「ゲームをいったん削除したのち再インストールした場合」、「無料体験版をインストールした場合」などのケースについてはUnityは後にインストール料の徴収はないと説明しました。さらに、Unityは新しい料金体系を適用しても顧客の90%以上は影響を受けないなどと述べ、問題の沈静化をはかっています。ただそれでも、開発者らの不満が収まる気配はないように見えます。

そんななか、モバイルゲーム業界関連のニュースサイトMobilegamer.bizは、複数のデベロッパーが、ゲーム内広告プラットフォームを、Unityが提供する「LevelPlay」に切り替えれば、「Runtime Fee」を免除するとの提案をUnityから受けていると報じました。

さらに、Unityにとってライバルとなるゲーム内広告の「AppLovin」を使用しているデベロッパーのいくつかには、Unityのアカウントマネージャーから、LevelPlayでなくとも、AppLovin以外の広告プラットフォームに切り替えさえすれば、80~100%の「Runtime Fee」免除が提案されているとも述べています。

ユーザー獲得(UA)コンサルタントのMatej Lancaric氏は、今回の動きは広告収益およびUAの両方の観点からUnityのLevelPlayより先行しているAppLovinを「排除しようとする試み」だと述べました。

またUnityも、議論の原因である料金に関してブログを投稿し、その中で「Unity Gaming Servicesやモバイル広告対応ゲーム向けのUnity LevelPlayメディエーションなど、エディター以外のUnityサービスの採用に基づいて、Unity Runtime Feeに対応するクレジットを利用できる可能性がある」と記し、LevelPlayをゲーム内広告に採用すればRntime Feeが減免されることを遠回しに述べています。

昨年、AppLovinはUnityに対して175億4000万ドルで買収する提案を持ちかけていました。しかし、UnityはすでにAppLovinと同業のironSourceの買収に動いており、最終的にironSourceを選択しました。

ただ、AppLovinはその後広告ターゲティング向けのAIアルゴリズム「AXON2.0」の展開が功を奏したことなどもあり、非常に好調な業績を決算で発表しています。

Mobilegamer.bizは、「AppLovinが驚異的な成功を収めたのに対し、Unityは反撃しなければならなくなった」、「ただし、Unityがクライアントの反応をきちんと予測できていたとは思えない」。「業界全体かこれほどまで一致した反応があがることはまれなことだ」との、広告仲介業者幹部からの話を伝えています。

ちなみに、今回のRutime Feeの発表を受けた開発者たちは続々とUnityからGodotやCocos2Dといった他のゲームエンジンへの乗り換えを検討し始めています。人気のサバイバルゲーム『Rust』をUnityで開発するFacepunch Studiosの創業者Garry Newman氏は、自身のウェブサイトで「Unityと、そのツールキットを使用するほぼすべての開発者との間で信頼関係が壊れている」と述べ、「『Rust 2』は絶対にUnityゲームにはならない」と宣言しました。

なおUnityは、これら開発者からの反発を受け、9月18日に「チームメンバーならびに コミュニティ、お客様、パートナーの声に真摯に向き合い、ポリシーの変更に取り組んでまいります」としています。最新の情報は数日中に発表予定とのことです。

私たちは皆様の声を聞いています。火曜日に発表した Runtime Fee ポリシーについて、皆様に混乱を招き、ご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。私たちは チームメンバーならびに コミュニティ、お客様、パートナーの声に真摯に向き合い、ポリシーの変更に取り組んでまいります。最新の情報は数日中にお伝えする予定です。 皆様からの率直で厳しいご意見、心から感謝いたします。


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