これは大事件だ。ノンプロモーションで500万DL突破の『コトダマン』が示した、ファンと運営の新しい関係 2ページ目 | GameBusiness.jp

これは大事件だ。ノンプロモーションで500万DL突破の『コトダマン』が示した、ファンと運営の新しい関係

セガゲームスがリリースした『コトダマン』の勢いが止まりません。500万ダウンロードを突破した本作のプロモーション戦略を改めて分析するとと、現在のアプリマーケティングに必要なものがみえてきました。

市場 マーケティング
これは大事件だ。ノンプロモーションで500万DL突破の『コトダマン』が示した、ファンと運営の新しい関係
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ユーザー至上主義によって生じる二項対立


誰かに何かを薦める時、それが映画にしろ小説にしろ、「とても価値があって大好きだ」という本心から推奨するのであり、薦められる側の人もそのことを理解しています。しかし、ゲーム、ことスマートフォン向けゲームを推奨する時に限って、なぜか「回し者じゃないんだけど」とか「ステマじゃなくて」というようなエクスキューズが置かれる場面が散見されます。そのゲームが本当に好きだから薦めているはずなのに、熱心に薦めれば薦めるほど、わざわざ断りを入れなくてはいけないような、そんな後ろめたさを感じたことのある人もいるのではないでしょうか。この居心地の悪さの背景には、ゲームビジネスにおけるマーケティングへの強い不信があります。だからこそ、(スマートフォン向け)ゲームを推奨する際には自分の言葉が決して疑わしい売り文句ではないという自己弁護を要するのです。

不信が強まれば、施策も一筋縄ではいかなくなります。しかし、マーケターたちの議論は、どうすればシビアな目線をかいくぐってバズを生み出せるかというテクニック論に終始しがちで、不信の根本的な原因についてはあまり話し合われてきませんでした。というのも、マーケターは“ユーザーのために”施策を打ち出しているのであって、そもそも不信に思われるような謂(いわ)れはないと、真剣にそう思っているからです。その証左として彼らがいつも持ち出すのが売上や各種のKPIであり、指標が良い数値になれば、ユーザーのニーズに応えることができたと判断し、そうでなければ全然ダメという評価が下されます。要するに、ユーザーの期待に応えられたかどうかがマーケターの全てであり、いわば「ユーザー至上主義」という、ある種のイデオロギーに最も従属的な存在と言えるかもしれません。

しかし、“ユーザーのために”というスローガンの下、いかにも欲しがりそうなもの、興奮を呼び覚ますもの、シェアしたくなるコンテンツを鼻先に並べ立ててひたすら場を盛り上げることは、はたしてお為ごかしではないと言い切れるのでしょうか。ユーザー至上主義は、ユーザーに笑顔を向けながら、何やらキラキラしたもので埋め尽くすことで取り得る選択肢を実質的に消滅させ、ユーザーをコントロール下に置こうとします。一方で、ユーザーもまたイデオロギーを逆手に取って、「課金してやったのだから、こちらの要望に応えろ」という無茶な取引を持ちかけるようになります。今やユーザー至上主義は業界全体に蔓延しており、こういったやり取りも日常茶飯事になりつつあるのかもしれません。しかし、そのせいで好きなゲームすら素直に薦められない、推奨をまっすぐ受け止めてもらえないというのは、ユーザーにとっても、マーケターにとっても悲劇そのものではないでしょうか。マーケターが真にユーザーの最大幸福を目指すのであれば、両者のゼロサムゲームを解消し、ファンとゲーム運営者を共創関係へと再構築すべきです。それは即ち、「提供する者 / 消費する者」、「儲ける者 / 支払う者」、「事業者 / 顧客」という二項対立の解消を意味します。

『コトダマン』が起こした大事件とは


長らく、ユーザーと運営者はあまり上手くいかないものだと思われてきました。両者の対立を解消するなど夢のまた夢、単なる理想論に過ぎないと考えている人もいるかもしれません。しかし、マーケティングによってファンと運営者が全く新しい形で結びついたゲームが突然現われてしまったのです。それが4月16日にリリースされたセガゲームスのスマートフォン向け新作ゲーム『共闘ことばRPG コトダマン』でした。



『コトダマン』はひらがな7文字を組み合わせて、できるだけ多くの言葉をつくってバトルをする“ことば”をモチーフとしたRPGです。この手のゲームではお馴染みの成長要素とマルチプレイ機能が実装されていて、誰が遊んでも分かりやすいシステムになっています。キャラクターはかなりデフォルメされたデザインで、80年代に大流行したロッテのお菓子「ビックリマン」を彷彿とさせます。私は33歳なので懐かしくてたまらないのですが、若い世代の方はあまりピンとこないかもしれません。



『コトダマン』は素晴らしい出来映えのRPGで、私もすっかりハマっています。しかし、もうお気づきかもしれませんが、今時のスマートフォン向けゲームとしてはどうにも見た目の派手さに欠け、なかなか訴求の難しいタイトルでもありました。実際、今年2月に行われたクローズドβテストではモニターがなかなか集まらなかったようで、公式Twitterアカウントではそのことを自虐ネタにしつつ、積極的に応募を呼びかけていました。やがて、テスト期間が終わると「意外に面白い」というモニターの声がSNSでちらほらと聞かれるようになり、じわじわと認知が広がっていくようになります。それでも事前登録キャンペーンでは10万人でカウントがストップしており、(実際の応募者はもう少し多いのかもしれませんが、)同じセガゲームスの『D×2 真・女神転生リベレーション』の事前登録が60万人だったことを考えると、やはり見劣りする感じの否めない数でした。

ところが、4月16日のリリース直後から、『コトダマン』は誰も予想だにしていなかった快進撃を見せることになるのです。まずリリース当日にApp Storeゲームカテゴリのダウンロードランキングで10位に飛び込み、翌日にはあっさりと1位を獲得、その後も配信開始3日間で100万ダウンロード突破、1週間で200万ダウンロード突破と快調にダウンロード数を伸ばし、ついに配信1ヶ月で500万ダウンロードを達成しました。



しかも驚くべきことに、この間、大々的な広告プロモーションはほとんど行われていません。人気アニメを起用しているわけでもなく、イケメンのアイドルが登場するわけでもなく、熱いバトルロワイヤルが繰り広げられるのでもない、そんな『コトダマン』が大したプロモーションもないまま1位を獲ってしまったということは、業界の誰にとっても(恐らく運営スタッフにとっても)大事件だったのです。

『コトダマン』はなぜここまでヒットしたのか
神谷 美恵

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