ユーザーの決断が歴史の一部になる―『SILENT HILL: Ascension』を提供するGenvid Entertainment CEO・Jacob Navok氏【単独ロングインタビュー】 | GameBusiness.jp

ユーザーの決断が歴史の一部になる―『SILENT HILL: Ascension』を提供するGenvid Entertainment CEO・Jacob Navok氏【単独ロングインタビュー】

コナミの人気ホラーゲーム『サイレントヒル』から生まれたインタラクティブストリーミングシリーズが、11月1日に放映をスタートします。Genvid・CEOが語る「あの日、自分はそこに居た」感覚とは。

ゲーム開発 その他
ユーザーの決断が歴史の一部になる―『SILENT HILL: Ascension』を提供するGenvid Entertainment CEO・Jacob Navok氏【単独ロングインタビュー】
  • ユーザーの決断が歴史の一部になる―『SILENT HILL: Ascension』を提供するGenvid Entertainment CEO・Jacob Navok氏【単独ロングインタビュー】
  • ユーザーの決断が歴史の一部になる―『SILENT HILL: Ascension』を提供するGenvid Entertainment CEO・Jacob Navok氏【単独ロングインタビュー】
  • ユーザーの決断が歴史の一部になる―『SILENT HILL: Ascension』を提供するGenvid Entertainment CEO・Jacob Navok氏【単独ロングインタビュー】

コナミの人気ホラーゲーム『SILENT HILL』シリーズから生まれたインタラクティブストリーミングシリーズが、11月1日に放映をスタートします。

今回はその『SILENT HILL: Ascension』を手掛けるGenvid Entertainmentから、共同設立者兼CEOであるJacob Navok氏にインタビュー。

シリーズ再始動の第1弾として注目を集める『SILENT HILL: Ascension』や、2020年から2021年にかけて「Facebook Watch」上で配信された「Rival Peak」など、同社が提供するMILE(マッシブリー・インタラクティブ・ライブ・イベント)についてお話を聞きました。

Genvid EntertainmentのCEO Jacob Navok氏

──まずは今回『SILENT HILL』シリーズを題材とする作品を手掛けることを決断した背景を教えてください。

Jacob Navok氏(以下、敬称略)「Rival Peak」の放送後にいくつかのブランドと協業する機会があったのですが、各IPホルダーさんには「Rival Peak」が北米だけでなく日本やインド、南米などグローバルで視聴されるという強みを大変気に入っていただいたと同時に、ストーリーを深く展開したいという話をさせていただきました。実際に「Rival Peak」でもっとも反響があったのはストーリーの面で、物語やキャラクターへのエンゲージメントが非常に強いポイントでした。

Skybound Entertainment社と制作した「The Walking Dead: Last Mile』にも原作を手掛けたクリエイターが参加していましたが、そこからオリジナルの物語やキャラクターを作ったことで、視聴者は既存の物語を少し変えただけではない、オリジナルのストーリーを自分たちで決めていく体験ができたんです。

──『SILENT HILL』はその強みを生かせるシリーズである、ということでしょうか。

Jacobコナミデジタルエンタテインメント(以下、コナミ)さんとのお話がスタートしたのは今から2年半くらい前なんですが、彼らはフランチャイズに確固としたプランを持っていて、『SILENT HILL』シリーズに対する新しいアプローチを模索している最中でした。

そのため、既にある物語を広げていくのではなく、新しくてエキサイティングな物語を、しかも視聴者がそれに対してインタラクトして動かしていくことができるものを私たちに作らせてくださることになりました。これが先ほどの質問に対する1つの答えです。

──では、他にも理由があるのですか?

Jacobひとつは単純に私が『SILENT HILL』シリーズのファンだということですね(笑)。やはり自分たちがものすごく好きで、大切に思って尊敬しているものの方がそのフランチャイズに対してファンベースな動きが出来ると言いますか、どういうものが喜ばれるかを理解しているというのは大きいですね。もちろん既存のコアなファンだけではなくて新しい層へと広げていくことも考えてはいますが、やはり一番最初に始めなければいけないのはコミュニティ(と繋がること)ですね。

加えて『SILENT HILL』シリーズはサイコロジカルホラーというジャンルで、アクションではなく雰囲気だったり世界観だったり、あるいはキャラクター同士の関係性だったりが重要ですよね。私たちはゲームではなくインタラクティブなテレビ番組に近いものを作っているので、遊ぶ必要がなく、見るだけでも楽しめるコンテンツとしても完璧なフランチャイズだと考えています。

──さまざまな理由が後押しになったんですね。

JacobまずIPがそもそも素晴らしいですよね。コナミさんもすごく興味を持っていただいていますし、パートナーのクリエイティブチームも素晴らしいです。J・J・Abrams氏のチームに、『Dead by Daylight』のBehaviour Interactive。彼らと一緒になればすごく特別なものができると確信しました。とても長い回答になってしまったのですが、それぞれがすごく重要だと思っています。

──ありがとうございます。そうした各社が集まってチームが形成されている中で、Genvidはどういう役割になっていて、どのように本作が作られているのでしょうか。

Jacob私はスクウェア・エニックス出身なのですが、同社はご存知のように内部開発に強みを持つスクウェアと、外部の開発者を使ってのパブリッシングを得意とするエニックスの二つの大きな会社が合体しています。

後者では、クリエイティブの面は掘井雄二氏や三宅有氏などの内部の人にコントロールされていますけれども、実際に開発するのは外部のクリエイターですよね。Genvid Entertainmentもエニックスモデルを参考にしています。

──外部のクリエイターさんの作品をコントロールしていると。

Jacobはい。弊社の今まで全てのプロダクトは、「Rival Peak」、『PAC-MAN COMMUNITY』、「The Walking Dead: Last MILE」、そして「SILENT HILL: Ascension」も含めて、全て弊社の方でコントロールして、外部の開発者が作っている形式です。

今回のクリエイティブチームの紹介をしますと、クリエイターチームへのインタビューをまとめた動画「SILENT HILL: Ascension | An Inside Look」で最初に話している方が弊社のチーフクリエイティブオフィサーであるStephan Bugajです。ピクサーで10年間テクニカルディレクターを務めていて、その後はTelltale Gamesのスタジオクリエイティブディレクターを経て、DJ2 Entertainmentでは『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』を手掛けています。ゲームと映画を繋ぐという点で特別な才能を持っていて、『SILENT HILL: Ascension』は彼のアイデアなんです。

Martin Montgomeryはクリエイティブディレクターで、Telltale Gamesで『The Walking Dead』や『ボーダーランズ』のゲームプロジェクトに関わっていました。その後はRiot Gamesで『レジェンド・オブ・ルーンテラ』のクリエイティブディレクターも務めており、彼とステファンはナラティブデザインというとてもユニークな経験を持ってます。

インタラクティブな体験があってもストーリーが面白くないと視聴者はエンゲージしないですよね。世界でも類稀なインタラクティブでナラティブな体験だった『The Walking Dead』に携わっていた経験が生きています。

そしてもうひとり、Shiaw-Ling Lai。彼女も元Telltale Gamesです。「こういうものを作りたい」というイメージをしっかり表現できる人間がクリエイティブチームに集まっているのです。

──制作スタジオであるBad RobotやBehaviour Interactiverはどの領域を担当しているのでしょうか。

JacobBad Robotはクリーチャーや環境アート、キャラクターデザインなどのアート系の部分を全て担当しています。音楽にも、とても有名な作曲家に参加していただいていますが、中でもcEvin Key氏はSkinnyPuppyというバンドのメンバーで、彼らの80年代のインダストリアルミュージックには、実際に『SILENT HILL』シリーズの音楽もインスパイアされています。

コミュニティの話に戻りますが、コアなファンからは彼らがプロデュースしたサウンドトラックが欲しいという声も届いていました。そういったすごく重要な部分を、Bad Robotが担当しています。

──非常に強力なメンバーですね。

JacobBad Robotからは『バイオハザード ヴィレッジ』のメインライターも務めたAntony Johnston氏も参加されていて、本作の全てのシナリオも彼によって執筆・編集されています。彼は『Dead Space』と『バイオハザード』、そして『SILENT HILL』の3作品に参加している世界で唯一の人物ではないでしょうか。

Behaviourもレベルデザインやチェック・技術的な部分を担当してくださっていて、彼らなしでは開発できません。弊社でマネジメントをしてますが、全て対等なパートナーとして取り組んでいます。

──ちょうどサウンドの話があったので音楽についてもお聞きします。今回の音楽は全て新たに作っているのでしょうか、それとも原作で山岡晃氏が作ったものをアレンジしていたりするのでしょうか。

Jacob番組の中で流れる楽曲は全て新しいものです。これは『SILENT HILL: Ascension』が「Rival Peak」や『The Walking Dead』とは仕組みが大きく異なることが理由です。

後者のプロジェクトは24時間ずっと稼働しているものでしたが、本作ではユーザーの方たちは決められた時間に来て体験をする訳です。ですからシネマティック体験がすごく重要になっていて、単にバックグラウンドミュージックとして流れている楽曲ではなく、きちんとテレビ番組や映画のような音楽を作る必要がありました。

──シネマティック体験のための楽曲を新たに作っていると。

Jacobそうです。そのためキャラクターが登場した時に(『SILENT HILL 2』の)「Theme of Laura」が流れることはありません。本作の登場人物は皆新しいキャラクターで、それぞれに新しいテーマ曲があります。ただ、今までの作品から楽曲を使うアイデアもあり、例えばノンシネマティックな、番組以外のところで使ってみるというのは良いアイデアですよね。

──テレビシリーズのようなイメージが強いかと思うのですが、選択肢で展開が変わるドラマ「ブラック・ミラー:バンダースナッチ」(Netflix)のような作品と最も違うと言えるのはどのような部分にあるのでしょう。

Jacob最終的に一番大きな違いになると思うのは「コミュニティ」ですね。

シングルプレイのゲームは1人で遊ぶものですし、マルチプレイのゲームを友達やグループと遊んだとしても4人とか6人くらいで、仮に『Fortnite』で知らない人とプレイした場合でも、コミュニティにいる100万人のユーザーと一緒に遊んだことにはなりませんよね。

これはテレビでも同じで、『バンダースナッチ』を見たとしてもシングルプレイヤーであることは変わりません。ここから新たに、10とか1000とかではなく、100万やそれ以上の人数で一緒に作り出す物語、という体験を生み出したいんです。なので「何が違うか」という質問の回答としては逆になってしまいますが、例としては『Fortnite』上で開催されるバーチャルコンサートに近いと言えるかも知れません。

──より多くの参加者と繋がっている体験という点で大きく異なるのですね。

Jacobただ、最も重要な違いとしては、バーチャルコンサートに参加したとしても、そのコンテンツに変化は起りませんよね。あるいはゲーム内イベントで、みんなで巨大なボスと戦うとして、私がずっとコントローラーを置きっぱなしにしていたとしても、きっと負けることはないでしょう(笑)。それでも勝ってしまうはずです。

しかし『SILENT HILL: Ascension』では、もしコミュニティがそのキャラクターを助けなかったら、そのキャラクターは死んでしまうのです。全てのキャラクターが死んでしまうことも起こり得ます。彼らを生き残らせることができるか、というのはファンの方たちへの挑戦状ですね。物語をコントロールしているのは私ではなく、皆さんですから。

──物語の進み方についてお聞きします。選択肢がいくつかあって、その中から選んだユーザーが最も多いストーリーラインで進んでいく、という認識で合っていますか?

Jacobそれよりも、かなり複雑ですね。ゲームとしてプレイする場面もありますし、毎日いくつかの決断が必要なところがあるんです。トレーラーでも紹介されていますが、「贖罪」、「苦悩」、「破滅」の3つのチョイスがあり、それぞれがそのキャラクターの運命に紐づいていて、毎日の判断が運命を変えていきます。

他にも、例えばキャラクターがクリーチャーに追いかけられるシーンではQTEがあり、そこでもし大多数の視聴者が失敗してしまった場合には、ピンチになります。その場ですぐ死んでしまう訳ではないですが、それが繰り返し起こり続けていると最終的に生き残る可能性はとても低くなるでしょう。

──細かな決断や行動の影響が積み重なっていくんですね。

Jacobここが他のコンテンツとまったく違うところで、知っていただきたいポイントです。例えば『SILENT HILL』シリーズのゲームでクリーチャーに殺されたら何が起こりますか?

──ゲームオーバーですよね。

Jacobでは、その次にどうしますか?

──リスタートします。

Jacobですよね。でも、本作はリスタートできないんです。映画でも、主人公が死んでしまったら映画は終わっちゃいますね(笑)。なのでこのタイトルは他の『SILENT HILL』シリーズと違ってメインキャラクターが複数人います。誰が生き残るかわからないからです。

キャラクター全員が生き残る可能性はとても低いですし、それを実際に観客の人たちが達成できるかどうかにはものすごく興味を持っています。不可能ではないんですよ。

──どのような結果になるのか、注目ですね。

Jacob観客が全員を殺そうとしてしまうのでは、という考えもあるかと思いますが、実はその真逆のデータが2つあります。ひとつは以前に行った『The Walking Dead』で、観客が毎回生き残る方を選んだという事実です。

また弊社のアドバイザーの1人であり、Netflixのオリジナルコンテンツ担当副社長を18年務めたCindy Holland氏が言うには、『バンダースナッチ』でもユーザーは一番最初は必ず良いエンディングを目指したそうなんです。

やはりビデオゲームにおいて死は負けを意味しますし、逆に言えば生き残ることが勝利ですよね。ユーザーの視点に立ってみると全員生き残らせて「勝ちたい」のが基本的な心理ですし、私の仕事はそれを難しくすることです(笑)。自分のことはダンジョンマスターだと思っていて、視聴者の方に興味深いアドベンチャーを提供したいと考えています。

──単に「この選択肢で分岐します」というよりは、徐々に変わっていくイメージでしょうか。

Jacobこのニュアンスはかなり重要なんですが、ゲームのキャンペーンモードのように選択肢が複数あって、このキャラは何と言うか、どういう行動をするのかを選ぶシステムも入っています。ただ、面白いのは「この選択はどういう運命に繋がっているのか」も、ちゃんと表示されるということです。この選択肢ではこう行動するけれど、実はこの運命に繋がっているんだというのが分かります。

ですから、オーディエンスが「こちらの方が面白い」と思う選択肢が実は”やばい運命”に繋がっていることもある。その曖昧さは僕にとってすごい興味深いもので、どうなるか注目しています。

──明確に「誰かを死なせる」という選択肢ではなく、ちょっとした行動で変化していくんですね。

Jacobそうです。『The Walking Dead』のように「このキャラクターは生きるか死ぬか」という明確な判断はないですね。このキャラクターがこういう行動をしたなら、この運命に繋がっていく……というような、だんだんと変わっていく物語を作りました。

──ユーザーは、リアルタイムで参加しないと楽しめないのでしょうか?

Jacob例えば飛行機に乗る予定があってリアルタイムで参加できない時も考えられますよね。ただ、1話ごとに短くとも24時間の参加期間(ウィンドウ)があり、もっと長くオープンしていることもありますから、飛行機を降りた後にログインして決断に参加することもできますし、参加期間終了後でもVODで視聴することも可能です。

ですからリアルタイムでなければいけないことは全くありません。ライブで参加した場合はQTEなどに参加ができるという「良いこと」はありますが、できなかったからといって何かを失うわけではありません。毎日ログインして楽しんでもらうのもすごく良いと思いますが、それを中心に生活を回さなければいけない、といったことは考えてないですね。

──参加しなくても楽しめるし、参加したらより楽しめると。

Jacob考え方としてはスポーツに近いですね。スポーツは今まさに起こっていることを見られるリアルタイムの方が面白いですし、一緒に見ているコミュニティの反応も楽しいですよね。もちろん試合の映像は後からいつでも見られますが、どちらか選べるならその場に居たいはずです。

これはちょっとした例なのですが、私はWWE(米国のプロレス団体)の本部があるスタンフォードで育ったので子供の頃からプロレスの大ファンで、私の妻も同様に大ファンなんです。2019年にWWEの年間最大のイベントである「レッスルマニア」がニューヨークで開催されて、しかもそれが妻の誕生日だったんです。チケットをプレゼントして、しかも「今日は私の誕生日」というボードを掲げながらふたりで観戦しました。

リングの真後ろで観ていたので、後からVODを見ると私たちのボードが映っているんです。100年後に動画を見た人も、私と妻が誕生日ボードを掲げているのを見る訳ですよ。そんな特別な体験を『SILENT HILL: Ascension』を毎日見に来る方に提供できると思っています。

──参加して行動した経験そのものが大きな体験になるのですね。

Jacob視聴者からのインプットは全てレコーディングしていますので、皆さんがQTEに参加したり誰かを助けるために決断したりすると、その歴史の一部になる。つまり自分が『SILENT HILL』の一部になって爪痕を残せるみたいなイメージですね。この物語は毎日変わって、そのイベントは2度と訪れることはありません。

例えばMMORPGで同じドラゴンを何百回も倒すような経験をしたとして、それがサーバーにレガシーを残したとは言い難いでしょう。ただ、もしもそれがたった1匹のドラゴンのレイドだったらどうでしょう。

そこに参加すれば龍を倒すことはできますが、参加しないなければ負けてしまうかも知れない。もし参加していたら違う選択ができたかも知れない。そのように、自分たちがそのキャラクターの命運を握ってインパクトを与えている存在だと感じてほしいんですよね。皆さんに「あの日、自分はそこに居た」と言って欲しいんです。レッスルマニアにおける妻のようにね(笑)。

──ユーザーが”みんなと一緒に楽しんでいる”と実感できるような仕掛け、仕組みはあるのでしょうか。

JacobTwitchとかDouYu、ニコニコ動画のようにチャットやステッカーで自分たちの興奮を伝えられる仕組みがあります。もちろん番組だけを純粋に楽しみたい方はオフにすることが可能です。コミュニティと一緒に見ていると感じたい方向けの機能は全てついています。

──まさに「アドベンチャーゲームをみんなで一斉にプレイする」という印象を受けます。新しいエピソードはどのような期間・間隔で楽しめるのでしょうか。

Jacob新しい物語が毎日出て、それぞれのストーリーが積み上がって1週間ごとにひとつのダイジェストエピソードを作ります。そのダイジェストエピソードは標準的なテレビ番組のように3、40分ぐらいですね。ですから、例えば5週目から参加しようとすると、その時点までのダイジェストを見ている段階はNetflixでドラマを見るのとほぼ同じです。

これが何ヶ月も続いて、ひとつのテレビ番組ができあがるようなイメージです。そして一番最後、シーズンが終わったら「NewGame+(強くてニューゲーム)」のような感じで、エピソードがまた始まります。これは今は社内で「what if」つまり「もしも」と呼ばれています。

ただ、メインの物語となるのはそのシーズンにおける最初の1回のみですね。そこで選ばれなかった選択肢の物語が「what if」で出てきますが、それは公式の物語ではありません。アドベンチャーゲームでは「どれが公式の物語なのか」を、あえて曖昧にしてると思います。あなたが思う物語があなたにとっての公式の物語だ、という感じですよね。ただ、このタイトルではコミュニティがただ一つの真の物語を作っていくんです。

──ありがとうございます。最後は会社としてのお話も伺いたいと思います。2年前にお話を伺った時には「やりたいことが色々ある」と仰っていました。あれからメンバーはかなり増えているのでしょうか。


※前回のインタビュー記事はこちら

Jacobそうですね。2年前に比べたらかなり増えていますが、自分たちはテレビや映画のプロダクションのようなものだと思っています。作品を作ってる時はすごく人数が増えるんですけど、その後の期間は減りますよね。そのプロダクションの求められる形で動いています。

──今後も自分たちでエンターテイメントを作っていくという話もありましたが、今後もインタラクティブなストリーミングエンターテイメントの数をどんどん増やしていく方向で考えていますか?

Jacob本作の他にもプロジェクトが動いており、とても楽しみにしています。

(編集部注:「サンディエゴコミコン2023」にて、「DCコミックス」のIPを活用した新プロジェクト「DC Heroes United」と、人気シリーズ『ボーダーランズ』を提供するGearbox Entertainment Company社とのプロジェクト「ボーダーランズ・エコービジョン・ライブ」が発表された)

「サンディエゴコミコン2023」でJacob氏が登壇したステージのようす

現在抱えているプロジェクトはおよそ2年半ぐらい前からスタートしているのですが、難しさを感じているのは、まだ自分が「Rival Peak」や『The Walking Dead』からの学びを元に動いていることですね。今作ってるコンテンツはほぼ同じタイミングで始めたので、ユーザーがもっとも楽しめる部分がまだ分かっていないんですね。

例えば、僕はこのQTEシーンが面白いと思っているけれど、ユーザーが本当にそう思うのかは分からないし、反対にストーリーにおける決断の方に関心を持つかもしれない。これからユーザーの反応を見ながら、どこに注力すればいいのかを決めたいと思っています。

──『SILENT HILL: Ascension』の反応によってGenvidの未来も変化していくと。

Jacob今作ってるコンテンツは皆ほぼ同じタイプで、ストーリーをメインとして周りにアドベンチャーやパズルが入ったものです。でも、例えば将来的にはさらにゲーム部分を強化したコンテンツを作っていくということもあり得ます。

──Genvid SDKなどの開発者向けテクノロジー事業についてはいかがでしょうか。

Jacobこの2、3年間はずっとエンターテイメントに僕の時間を集中していますが、今作っているコンテンツは全てGnevid製のSDKベースで開発しています。「ドッグフードする」という言葉がよく使われますけど、弊社はまさにそのドックフードをやっていって、それでたくさんのバグを修正しました。ですから、他のジャンルのコンテンツを作っているインディーズやパブリッシャーはバグが直っている良い部分を使えているかと(笑)。

──引き続きSDKで自社のコンテンツを作って、ツールそのものは他のデベロッパーにも使ってもらうという形でしょうか?

Jacobそうですね。今後は『SILENT HILL』や他のシリーズでのマネタイズからもデータを取れるので、「このタイプのコンテンツを作ったらこのビジネスモデルになる」といったデータも共有できるようになっていきます。

──マネタイズもそこに入ってくるんですね。

JacobFacebookでは「Rival Peak」と『PAC-MAN COMMUNITY』、『The Walking Dead: Last Mile』と大きなタイトルを3つやったんですけど、全て完全に無料だったんです。弊社はコンテンツを作ってネットワークリリースして、ビジネスモデルを扱うのはMeta、という形式です。Metaのマネタイズは基本的にネットワーク広告ですよね。

なので、どういったタイプのビジネスモデルが可能なのか、ユーザーに対してどういった課金制度が一番良いのかのデータ、情報もなかったので、今後様々なビジネスモデルをテストしながらたくさんデータを集めて、チューニングしていくことが大事だと思ってます。弊社は売り上げよりも、コンテンツに対してどの部分が一番気に入ってもらえるかが重要だと思っていますから。

──最後にGenvidが会社として、またこの先2年ぐらいどういうふうに進んでいきたいと考えているかお聞かせください。

Jacob弊社は、いうなれば“インタラクティブなNetflix”のような会社になっています。複数のタイトルを出して、ユーザーが様々なIPを楽しむことができる。それが一番の目標です。

──最終的にはプラットフォームも自分たちで持って?

Jacob持てたらいいね!

──期待しています!本日はありがとうございました。


『SILENT HILL: Ascension』は日本時間11月1日より配信予定。現在Google PlayApp Storeにて事前予約を受付中です。また、放映開始日からAscension.comにてデスクトップブラウザでもご利用できます。

《ハル飯田》

この記事の感想は?

  • いいね
  • 大好き
  • 驚いた
  • つまらない
  • かなしい
【注目の記事】[PR]

関連ニュース

特集

人気ニュースランキングや特集をお届け…メルマガ会員はこちら