【eスポーツの裏側】地域を巻き込むeスポーツ施策で「ビジネスチャンスを感じる街へ」―横須賀市観光課担当者インタビュー | GameBusiness.jp

【eスポーツの裏側】地域を巻き込むeスポーツ施策で「ビジネスチャンスを感じる街へ」―横須賀市観光課担当者インタビュー

「Yokosuka e-Sports Project」は、eスポーツに関わる人々による地域コミュニティの活性化や新たな文化が定着することを目指すもので、多くのeスポーツ関連事業者やプロチームなどと連携しながら、部活動の支援や独自大会の開催などに取り組んでいます。

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eスポーツに携わる「人」にフォーカスを当てて、これからのeスポーツシーンを担うキーパーソンをインタビュー形式で紹介していく【eスポーツの裏側】。前回の連載では、「いばらきeスポーツ産業創造プロジェクト」を推進する茨城県産業戦略部産業政策課の三嶋達典氏にインタビューを実施。2019年に開催した「いきいき茨城ゆめ国体」をきっかけに、全国でもいち早くeスポーツを活用した産業政策をスタートした茨城県の取り組みの裏側について伺いました。

第42回目となる今回は、神奈川県横須賀市が2019年12月にスタートしたeスポーツ事業「Yokosuka e-Sports Project」にフォーカス。この事業は、eスポーツに関わる人々による地域コミュニティの活性化や新たな文化が定着することを目指すもので、多くのeスポーツ関連事業者やプロチームなどと連携しながら、部活動の支援や独自大会の開催などに取り組んでいます。そんな先進的な取組みを推進する神奈川県横須賀市観光課より、小山田絵里子氏、関山篤氏のおふたりにお話を伺いました。

[インタビュアー:森 元行]

——最初に自己紹介をお願いします。

小山田横須賀市観光課の小山田と申します。10年くらい観光課に在籍してアニメやゲームに関するコラボ施策を中心に担当していて、その流れでeスポーツに関する立ち上げも担当しました。

一番最初は『たまゆら』というアニメの聖地巡礼イベントからスタートしまして、他にも横須賀が舞台になっているアニメではアニメ『ハイスクール・フリート』のイベントも実施しました。今も継続的に続いているのは、地元の事業者が『アズールレーン』グッズを販売する協業施策で、コラボした包丁などもがたくさん売れて盛り上がっていますね。ゲームでは『Ingress』に始まり、『ポケモンPokemon GO』や『World of Warships』ともコラボしてきました。

私自身アニメやゲームが大好きなのですが、仕事でもそうしたコンテンツのファンの方を相手にした施策に興味があり、さまざまな内容にチャレンジしています。現在は「メタバースヨコスカ」という政策にも携わっています。

神奈川県横須賀市観光課 小山田絵里子氏

関山観光課の関山です。観光課では5年くらいになりまして、以前はアニメのイベントなども担当していました。ちょうどコロナ禍ですべてストップしてしまった中で、eスポーツに関するプロジェクトには立ち上げの少し後くらいに参加しました。当時はeスポーツの知識がまったくない状態でしたが、この事業の実務的なところをやらせてもらっていて、段々と勉強しながらという感じで4年くらい経ちます。

神奈川県横須賀市観光課 関山篤氏

——ありがとうございます。お話を聞いていると横須賀市自体がエンターテインメントに力を入れているように感じますが、それはどのような意図があってのことなのでしょうか。

小山田横須賀市では「観光立市推進アクションプラン」というものがあり、この中の「音楽・スポーツ・エンターテイメントと融合した都市を目指す」という方針で全体的に動いています。

関山コロナ禍の影響もあってすべてがプラン通りに進行しているわけではないのですが。

——そうした複数の動きの中で、eスポーツ事業も担当しているのですね。eスポーツに力を入れるようになったきっかけはあるのでしょうか。

小山田私は2017年頃から「eスポーツの文脈で何かやりたい」という気持ちがすごく強かったのですが、予算の問題やゲームに対するマイナスイメージの大きさなどもあり、市の中で企画を通すのがなかなか難しかったんです。

ただ、先進的な事例を打ち出すことで都市魅力の向上にも必ず寄与できると思っていたので、諦めずに企画書を握り締めて毎日を過ごしていました(笑)。そんな中で協力してくださるPCメーカーさんなどにも加わっていただいて、ようやく話がまとまってプロジェクトとして開始できたのが2019年でした。

——日本でeスポーツの存在が広く知られるようになる以前の、かなり早い段階でeスポーツに興味関心を持たれていたのですね。

小山田世界的に見ても日本はコンシューマーゲームの存在感がかなり強いのですが「これからはPCゲームを盛り上げていかないと、技術的にも教育的にも遅れてしまう」という危機感が個人的にありました。ただ、観光課にいるので教育に直結するような政策もできず、モヤモヤしていたような感じです。

——その危機感を持ったのはなぜでしょうか。

小山田私が自分でPCを組み立てて遊ぶくらいゲームが好きだったというのもあって、今後はどんな職場であってもPCに関するスキルを求められるようになるというのをすごく感じていましたし、娘にもそういう知識を増やしてもらいたいなとも考えていました。

今では学校でもひとりに一台ノートPCやタブレットが配られるようになっていますが、もう少し高性能で自発的にいじれるようなものに若いうちから触れられたら、すごく良い教育に繋がるだろうなという確信があったんです。もちろんプログラミング教育のような側面も必要ですが、ただ「ゲームがやりたい」だけの気持ちでも「CPUはどのくらいなら良いんだろう」と考えるようになりますから、そうしたハード的な知識を補助するきっかけをeスポーツという切り口でやればいいんじゃないかなという考えから、プロジェクトを立ち上げたという流れになります。

——ゲーム好きでもそこまで考えている人はあまりいないと思いますので、そういう方が担当者になっている横須賀市はラッキーですね。ちなみにどんなゲームをプレイされるのですか?

小山田当時はPCで『PUBG』をやっていましたね。最近は関山と『VALORANT』をプレイしています。

関山ようやくPCを買ってプレイできるようになったのですが、インターネット回線など自宅の環境整備をしなければならないのが課題です(笑)。もっと勉強しておけばよかったなと、身をもって体験しています。

小山田そう、まさにこのスタンスなんですよね。ゲームをするために何を改善すれば良いのかを子供たちが自然に学んでいければいいね、という話なんです。

——一昔前までは「PCでゲームをする人=ハードコアゲーマー」のようなイメージもありましたが、コロナ禍の影響もあり今はかなり状況が変わりましたよね。

小山田そうですね。私たちがプロジェクトを2019年に始めたのも、後から考えると良いタイミングだったかなと思います。

——Yokosuka e-Sports Projectでは「地域コミュニティの活性化、および新たな文化が定着することを目指す」と表現していますが、具体的にはどのような活動から始めたのでしょうか。

小山田最初にやったのは高校にPCを配ることです。今は市内高校にゲーミングPCを5台ずつ無料貸与して、部活動として運営してもらっています。2019年のスタート時点では2校でしたが、徐々に増えて現在は10校で導入しています。ただ無料貸与であっても高校に導入するのにはハードルがあり、例えば部室として使える部屋がなかったり、部室にインターネット回線がなかったりします。ここ何年かはネットワークを構築する工事費を支援するなど、フォローをしながらやっている状態です。

あとは我々の取り組みに賛同してくださるパートナー企業の方々から高校生に対しての教育サポートもいただいていて、たとえばMSIさんによるPC組み立て教室なども実施しています。

「Yokosuka e-Sports Project【紹介ムービー】」より

——支援の形もいろいろあると思いますが、どういった方々がパートナーとして参加しているのでしょうか。

小山田大会の協賛をしていただく企業さんや、高齢者向けのeスポーツを推進している団体さん、市内の施設で何かイベントをやってくださる方など、本当にさまざまな業種の方々がさまざまな目的のもとで集まってくれてます。

唯一共通してるのは「横須賀のeスポーツを盛り上げる」というところ。現在はDiscordサーバーを運用しているのですが、そこでお互いできることとやりたいことを共有してもらい、話し合って新たな企画が生まれることもありますね。

関山eスポーツチームさんや学校さんを含め、eスポーツを横須賀で盛り上げたいと思ってくださる多種多様な企業さんなど、現在は47団体に参画いただいています。

——さまざまなイベントを実施してきて、市役所内や市民の方、あるいは県外からも注目されていると思います。反響はいかがでしょうか。

小山田スタートした当初はすごく批判されるんじゃないかと不安で、たくさんの想定問答を用意していたのですが、実際はかなり好意的なご意見が多かったですね。部活という取り組みにすることで大人の目の届く範囲内で盛り上がれるという安心感もありますし、チームで切磋琢磨するチームビルディングが推進できるので、むしろ安心できて嬉しいという声をいただいたり、今までひとりでゲームをしていたけれど、部活と関わることで前向きに外に向けてエネルギーを使うようになったと変化を報告してくださる生徒さんがいたりして、良かったなと。

反面、課題としては現場の教員不足や負担増加が挙げられます。私たちがどんどんやりたい、もっとやりたいと思っていても、たとえばイベントには絶対に先生についてきてもらわないといけないので、負担を考えるとイベントが限定的になってしまうといったこともあります。

——コーチとしてプロeスポーツ選手が指導にあたることもあるようですが、そうした技術面よりも実務的な負担の大きさが問題ということでしょうか。

関山部員が30人以上いる学校も出てきたので、それを先生が1~2人で見るというのは大変ですね。

小山田30人で5台のPCを共有しているから、プレイできる時間が限られるという課題もありますね。

関山私たちも頑張っている学校には追加で貸し出し対応していて、今は10台体制の学校も増えているとはいえ、そこは課題です。あとはPCゲームだけでなくコンシューマーゲームをプレイしている子供たちもいて、他の部活とは違って先生がカバーすべき範囲が広すぎるところも課題なのかなと。

——学校によって規模の違いはあると思いますが、30人も在籍しているのは大所帯な部活動ですよね。

関山そうですね。学校によってはeスポーツ部として活動してる子に加えて友達がふらっとゲームをしにくる集まりになっているケースなど、厳密に人数を把握するのは難しい部分もありますが。

たまたまPCに興味がある先生がいらっしゃる学校や、部活動として成り立たせるための方法を自分で考えて動いてくださっている学校は、やはり勢いがあります。

——そういった部活動の推進に加えて、発表の場所となるeスポーツ大会も開催していますね。

関山市内の学校での対抗戦もありますし、全国大会にも出ることもあります。

——市内では何チームほど参加するのでしょうか。

関山直近だと『VALORANT』のオフライン大会を予定していますが、4校から5チームで、計25人ですね。行事等で出られないことがあったり、他のタイトルをやりたい子たちが多い学校は参加しなかったりという事情もあるようです。

——これだけ制度がしっかりしていると「eスポーツ部があるから、この学校に行きたい」という中学生も出てきそうです。

関山はい。既に子供たち主導で部活動の見学に来る場合もあれば、安心感を求めて親御さん主導でようすを見に来られる場合もあるそうです。

——横須賀市ではかなり初期から自治体としてeスポーツに取り組まれています。他の自治体からの問い合わせも多いのではないでしょうか。

小山田問い合わせも視察も本当に多くて、今は「まずはこれを読んでください」という専用の書類も用意しています。

関山やはりどの問い合わせも質問内容としては同じような点が多いですからね。

——他の自治体の取り組みを見ていて、ボトルネックになっている部分を感じることはありますか?

関山「eスポーツで何かしてほしい」のようなあいまいなリクエストがトップダウンで下りてきて担当者の方が困るケースが多いんだろうな、というのは感じます。問い合わせをいただいても、その自治体さんの課題も分からないままお話をすることになってしまうので難しいですね。

小山田ゲームをやること自体が目的ではなく、その先に何をやりたいかによって扱う部署が変わるのですが、それがなかなか決まらないことがネックとしてあるように感じます。横須賀市としても、企業誘致など観光課でしか扱えない部分があるので私たちが担当してはいるのですが、事業の内容は教育寄りだと思います。

福祉や教育、観光といろんな部署にeスポーツ担当がいて同時多発的に扱っていくのが最適解ではないかと私は思っているのですが、eスポーツに前向きな人がいない部署もあれば異動もあり、それぞれの部署で知見が溜まっていかない難しさがありますね。

——確かにこれまで伺ったお話は教育にまつわる部分が多いように感じます。改めて観光課のメインミッションについて教えていただきたいのですが、基本的には「横須賀市に観光に来る人を増やす」ことになるのでしょうか?

小山田基本はそうですね。ただ「都市魅力の向上」も観光課のミッションのひとつなので、そういった考え方でeスポーツ施策を頑張っています。単純に観光に来てもらうだけではなく、都市魅力を増やしていくことで企業版ふるさと納税をいただけたり、eスポーツ関連企業・関係人口の増加が進んでいたりという部分にはすごく手応えを感じていて、そういう意味では本当に唯一無二の財産を得ることができたのかなと思っています。

「Yokosuka e-Sports Project【紹介ムービー】」より

—— なるほど。eスポーツで都市魅力の向上に取り組んでいると聞くと、確かに観光課らしい役割ですね。

関山eスポーツでコロナ禍を上手く乗り越えられたという側面がある一方で、そうした状況下で人を呼べなかったという、観光としては少し弱かった面もありました。本来はオフラインで大会ができたら良かったのですが、費用も鑑みてオンラインになっている状況ですし、それで成功してもう何年も来ているので、改めてここからオフラインに一歩踏み出すのは結構大変だなと感じているところです。

——よほど大規模なeスポーツ大会でなければ「オンラインが良い」という風潮もあり、そこをブリッジさせることはどこの自治体でも課題になるのではないでしょうか。それにしても、横須賀市さんの取り組みはいずれも最先端ですね。

小山田私たちが結構変な企画を立ち上げているというのもありますが、それを「やってみなよ」と応援してくれる横須賀市が先進的なんだと思います。全国の自治体の中でChatGPTを初めて導入したのも横須賀市役所です。今はメタバースとAIを繋げられないか、というようなことも検討してます。

——自治体以外からの反響についても伺います。現在は日本eスポーツ連合(JeSU)やプロゲーミングチームとの連携などは進めていますか?

関山JeSUさんとはお会いした際に情報交換をしていて、まだタッグを組むところまではいけていませんが、今後できたら良いなとは思います。プロチームさんとは大会のご協力や参加者へのメッセージをいただくなど、つながりが増えてきているのかなとは年々感じているところです。

こちらの勝手な解釈かもしれませんが、自治体が応援していることはチームにとっても悪いことではないと思いますので、好意的に見ていただいているのかなと思っています。私はそれまでスポーツに携わってきたので、eスポーツ業界のチーム同士があまり競合しない、壁がない雰囲気にはびっくりしましたね。

——業界全体でeスポーツを盛り上げていかないといけないから頑張ろう、という空気はありますよね。今後、eスポーツを活用して達成したいゴールや「こういう世界観を作っていきたい」というものがあれば教えてください。

小山田「eスポーツの聖地」になることを夢見て今まで頑張ってきたのですが、やはり「聖地ってなんだろう」というあいまいさもありますので、具体的には横須賀を「eスポーツでビジネスチャンスが感じられる街」にしていきたいと考えています。

eスポーツで何か事業を立ち上げたり企画したりする時に横須賀を選んでもらえるような街になるためにも、お声掛けいただいたら全力でサポートしますし、視察に来る方も全力でおもてなしして仲間を少しずつ増やし、パートナー制度を盛り上げている、という現状です。

——なるほど。それは伝わりやすい目標ですね。

小山田ただ、市役所ができることは限られていますし、この先ずっと大会を運営できるだけの予算が得られるかと言ったらそうではないと思うんです。市役所の役割は市内のeスポーツが盛り上がるきっかけとなるような政策を行うことですが、恐らくそこまで長い年数は続けられないと思うので、街の中でキーパーソンを作るなどして自走化できるような仕組みを構築してから、次の場へとお渡ししていきたいです。

——地方自治体でそうしたスキームが成功している事例は、eスポーツ以外の領域も含めてどのようなものがあるでしょうか。

関山例えば広島県における広島東洋カープやサンフレッチェ広島というスポーツチームの存在ですね。実際に広島に行ったときも路面電車のアナウンスをカープやサンフレッチェの選手が担当していましたし、地域に根付いていると感じました。

小山田eスポーツではありませんが、横須賀市では何度か『アズールレーン』のイベントを実施してきて、予算がつかなかった年には地元の事業者さんがお金を出し合ってイベントを運営してくれたことがありました。規模としては全然違いますが、それが自走化に向けた取り組みの良い成功事例ですね。

——予算がつかなくなったら終わりということも多いので、それはすごい事例ですね。

小山田イベントの事務局にあたる役割もやっていただいて、完全に手放しとまではいかないのですが、徐々に地元が主体になってくださっています。市役所が新たな取組みを始める際には、こういう理想的な形を地元の事業者さんに実感してもらうことがすごく大事で、「こういう風にやれば商売になるし、みんな喜んでくれるんだな」という成功体験が必要だと思っています。

関山イベントでのコラボ企画商品の売り上げも創業以来稀に見るというレベルですごかったそうです。やっぱりそういう成功体験があったら、次もやろうと思えますよね。

——観光課の皆さんが説得をしながら、地元の皆さんのマインドを変えていった成果でしょうか。

小山田そうですね。横須賀市では市役所が主導でやることが多くて、意識を変えるという面ではすごく大変でした。徐々に他の商店街などへ発展させていきたいなと思っています。

——ここ数年で日本のeスポーツの注目度はいろいろな変化をしてきました。この変化をどのように捉えていますか。

小山田配信も含めて文化として普及していますし、小学生でも慣れ親しむような文化になったのかなと思います。一度立ち止まって、今の流れに自治体としてどう付き合っていくかを考えたときに、やっぱり教育の面でフォローするのが一番かなと。

エンタメや露出度で勝負をかけたとしても大手の企業さんには勝てないし、そこと戦う必要はないと思っています。eスポーツ業界が盛り上がってくれるのはすごく嬉しいので、自治体としてやるべきことをしっかり見据えてブレないようにやっていきたいなと思ってます。

関山私は変化が速いなと思いますね。その変化を冷静に見ないといけない部分もありますし、止まらず進み続けないとダメだなとも思います。

やはり自治体の限界というのもありますので、そこはパートナー制度などを上手く使って民間と連携できれば良いなと考えています。そうした住み分けができてくればeスポーツ産業も根付いてくるのではないでしょうか。

——お話を聞いていて、業界の構図やマーケットの状況をかなりインプットしている印象を受けますが、今のプロジェクトはどういう風に構築してきたんでしょうか。

小山田一番は自分で楽しむことですね。関山は異動してきたときはまったくゲーマーではなかったので「どうやって一緒にやっていこうかな」と思ったのですが、やっぱり引き込むしかないなと。まず『VALORANT』がプレイできるPCを買って、日々一緒にプレイして、今度は一緒に大会観に行こうか、と少しずつ引き込んでいきました。

その文化を担当者自身が楽しまなければ楽しいことは生み出せないと思うので、遊びと仕事をつなげる努力が必要になるのではないかと感じています。

関山そうですね。昔の小山田との会話を見返すと本当に初歩的なことばかり質問していて恥ずかしいくらい何も知らなかったのですが、本当にトライアルアンドエラーでここまで続けてこられました。自分も興味を持ったら積極的にやるタイプなので、興味をもたせてくれたこと、引き込んでくれたことで助けられました。

小山田他の自治体から視察に来られる時にも「市役所の中にも絶対ゲーマーがいるから、まずその人に話を聞いてみて」と伝えるようにしています。地元の人なら課題や対処についても直感的に分かることが多いはずなので、身の回りから仲間を増やしていくことがすごく大事だと、いろんな人に伝えたいですね。

——今後も日本のeスポーツシーンは変化していくと思いますが、横須賀市さんとしてこの業界に対してどのように貢献していきたいですか。

小山田やりたいことはふたつあって、ひとつは教育分野です。まだ予算がついてるわけでも事業化する予定もないのですが、学生に向けたワークショップのようなものができないかと考えていますし、若い年代に対してどんなことが提供できるかは引き続き模索していきたいと思っています。

もうひとつは、これはパートナーのみなさんのフォローも受けながらになりますが、これからeスポーツを生業にしようと思ってくれている方が横須賀でビジネスを始める際に手助けができたら良いなと思っています。

——ありがとうございます。関山さんはいかがですか?

関山横須賀市は比較的「声をかけられたらなんでもやってみよう」という姿勢があるので、自治体だからと敬遠せずにお声がけいただければ、喜んでそこにチャレンジしたいと思っています。

反対に、教育だったり福祉だったりという自治体でなければできない分野もありますから、なにか「こういうことできたらいいな」というアイデアがあって、その手助けができるのであればぜひ貢献したいなと考えています。

——eスポーツに取り組みたいと考えている自治体の方に向けたアドバイスやメッセージをお願いします。

小山田まずは一緒にゲームしましょう。視察をする前に、一緒に『VALORANT』をプレイしたいです。文章で読むよりも自分で体験すれば実感があって次のステップに行きやすいので、どんどんゲームをしてもらいたいです。

関山eスポーツにはまだ私たちも知らない可能性も多々あると思います。そういうことはやってみないとわからないですし、やる人によっても違うので、まずはチャレンジしてみること、考えてみることが大事かなと思います。我々も予算がないところから始まっていますし、後からついてくるものはたくさんあると思うので。

小山田イベントにもたくさん行ってほしいですね。やはりあの熱気を体験するのは大きな意味があると思います。

関山以前、小山田と一緒に『VALORANT』の大会「VCT Playoff Finals」を観に行ったのは本当に衝撃的な体験でしたね。2日間でさいたまスーパーアリーナの25,000人以上のキャパシティーが一瞬で埋まって、ちょっと我々が浮いているくらいの熱量を感じました。イベントを経験して欲しいという点は私も強くすごく伝えたいですね。

——ありがとうございます。最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

関山自分が携わるようになって4年が経ちますが、eスポーツには可能性を感じることばかりで、色あせない刺激もたくさん受けています。今後もそういった刺激は増えていくでしょうし、成熟してくる部分もあるでしょう。ぜひご一緒できるところはご一緒して、新しい魅力も一緒に作っていきたいと思います。よろしくお願いします。

小山田eスポーツは手段のひとつとして考えてもらって、まずは「自分が何を成したいのか、何を目標とするのか」をしっかり明確化するところからeスポーツ施策は始まると思います。また、他にはないコミニケーションツールとしてもeスポーツはとても優秀ですので、部下との飲み会をゲームに置き換えるとか、そういう感じで自分が楽しんで周りを巻き込みながらやってもらえたらいいなと思います。仲間が増えてくれると嬉しいです。よろしくお願いします。

《ハル飯田》

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