eスポーツとは何か?―元/現ゲーム会社幹部が新規参入企業に伝えたいこと【東京eスポーツフェスタ2024 セッションレポート】 | GameBusiness.jp

eスポーツとは何か?―元/現ゲーム会社幹部が新規参入企業に伝えたいこと【東京eスポーツフェスタ2024 セッションレポート】

「eスポーツ」という言葉の定義や、企業がeスポーツに参入する意義について何度も触れられました。

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eスポーツとは何か?―元/現ゲーム会社幹部が新規参入企業に伝えたいこと【東京eスポーツフェスタ2024 セッションレポート】
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eスポーツの普及と関連産業の振興を目的としたイベント「東京eスポーツフェスタ2024」が今年も東京ビッグサイトで開催されました。会場ではeスポーツ関連産業の展示会や体験エリアが展開されており、多くのeスポーツファンで賑わいました。

またイベントではセミナー・学習企画として、プログラミング講座やeスポーツをテーマにしたトークセッションなどが開催されました。

本記事では「元/現ゲーム会社幹部トークセッションゲームとeSportsの境界とは? 」にのようすをレポートします。

忙しい方向けに2つのポイントで整理

本セッションでは、「eスポーツ」という言葉の定義や、企業がeスポーツに参入する意義について何度も触れられました。

この2つのポイントはeスポーツについてまだよく分からないという方や、これからeスポーツ業界に参入を考えている方は、十分に理解しておくべきでしょう。

eスポーツとはあくまでも「コミュニティ」

本セッションでは「eスポーツとは何か」という疑問に対して「eスポーツとはコミュティである」「そもそもeスポーツが包括する範囲を明確にする意義自体がないのかもしれない」という回答が飛び出しました。

一般的にeスポーツの定義は「電子機器を用いて行う娯楽、競技」と表現されます。「野球」「サッカー」などの細分化された競技名でもなければ、『VALORANT』『ストリートファイター』のようなゲームタイトルを指すわけでもありません。

eスポーツという言葉について、一定の距離感を保ちながらも、その解釈や影響力を理解できるセッションになりました。

「なぜeスポーツ業界に参入するか」が重要

本セッションでは、eスポーツ業界に参入する際の条件についても議論が交わされました。

昨今は様々な企業や自治体がeスポーツ業界に参入しています。一方、「若い人から注目を集めたい」などといった理由で、闇雲にeスポーツに参入をしたものの、思ったような成果が得られなかったケースも増えてきました。

登壇者からは「組織がeスポーツとのコラボレーションを行う際、因数分解をして、なぜeスポーツという形で展開する必要があるのかを考えることが重要」という話がありました。

セッション後半では「愛知県豊田市であれば車が非常に有名な地域なので、その町のブランディングとして車を使ったゲームを展開するのは意味があるでしょう。このように組織の目的や特性と連携させるから相乗効果が出てくるのであって、組織がただ単にゲームを進めるだけではeスポーツ業界に参入する意義はないのかもしれません」という具体的な指摘もありました。

登壇者紹介

本セッションの登壇者を紹介します。

ゲスト:岡田 大士郎

HLD Lab 代表取締役。一般社団法人デジタル田園都市国家構想応援団 専務理事、一般社団法人ゲームカルチャー協会理事。

1979年(株)日本興業銀行(現・みずほ銀行)へ入社、ロンドンなどでの勤務を経験した後に、ドイツ銀行グループでDirector, Head of Taxesとして国際税務統括の業務に従事。2005年にスクウェア・エニックスに入社し、2007年まで米国Square Enix, Incの社長(COO)として米国事業経営に携わった後、「組織風土並びに働き方改革」をミッションとして総務部長に就任。2019年1月に株式会社HLD Lab(Happy Life Design Lab)を創業。

現在は、さまざまな社会共創活動に取り組んでいる。

ゲスト:鈴木 良昭

BLUE BEES 代表取締役

eスポーツ・ストリートスポーツ・ドローンレースのプロチーム「BLUE BEES」を運営。

スポーツを通じての地域活性化と社会課題解決に貢献し、「eスポーツ×教育」「eスポーツ×障害福祉」の領域にて愛知県からスタートアップ企業として認定。スポーツビジネスと社会課題解決の新たなチャレンジを共に推進できる企業を募集中。

司会:山口 慧(総合MC)

BLUE SPLASH所属のフリーアナウンサー、タレント、声優。愛称は、慧ちゃん、ルガ姉。

「ファイナルファンタジーXIV公式番組」「アークナイツ公式生放送」など、多くのゲーム関連インターネット番組に出演。「Shadowverse World Grand Prix 2018」など、イベントMCも幅広く務める。本セッションでは総合MCを務める。

注目の議題を3つピックアップ

さまざまな切り口で「eスポーツ×企業」の議論が行われた本セッションについて、筆者が特に注目した議題を3つピックアップします。

  • ゲスト2人が考える「eスポーツの定義」

  • 企業がeスポーツを盛り上げ、マネタイズするには?

  • これからeスポーツに参入する企業に向けて

ゲスト2人が考える「eスポーツの定義」

岡田eスポーツというのは、「スポーツ」が含まれているので、対戦をするようなイメージが強いように思われていますが、 私は「コミュニティ」だと考えています。社会の活動をデジタルの中で行う、そしてそれを通してハッピーな暮らしを作っていける、そういったものではないでしょうか。

要は、多くの人たちの強いコミュニティを作り、 ワクワクを作っていくデジタルのプラットフォームが「eスポーツ」という形でこれから発展していくといいですね。

「ソーシャルスポーツ」のような感覚で、みんなで楽しんでいけるのが理想かなと。

鈴木私は愛知県名古屋市の魅力の向上だとか、日本を世界にPRするための手段としてのeスポーツから入っているので、岡田さんとは見方が違うかもしれません。eスポーツは、野球やサッカーと言ったゲームの名前ではなく、あくまでも「総称」として捉えています。

eスポーツという言葉は、基本的にはメディアで良い意味で取り上げていただいてはいますが、悪い意味では批判の対象にもなっている部分もあります。私は、単なる言葉に過ぎないので、もう少しラフに捉えていけばいいんじゃないかと思っています。

あえて定義の話をすると、(eスポーツは)「電子機器を使った競技」「いわゆるゲームを使った競技」みたいな意味で話されることが多く「じゃあARやVRはeスポーツなのかどうか」という議論もあります。

そもそも「そんなこと話さなくていいでしょ」というのが持論です。もう「今やってることが全てeスポーツなんですよ」って後付けぐらいの感覚で捉えていく方がいいかなと思います。

企業がeスポーツを盛り上げ、マネタイズするには?

鈴木たとえば東南アジアでは、ゲームは貧困層を救う一つの手段にもなっているんですけれど、適切なWeb3.0とかゲームの使われ方はもっと違うところに僕はあると思っていて。ある特殊なものを好きなファンやプレイヤーたちが集まってるのがeスポーツ業界なので、 一般的なマーケティングでは引っかからないようなデータが出るんですよね。

これって、一般の広告代理店さんやマーケティング会社がデータを出そうとしても結構難しい部分です。 スマホゲームやコンシューマータイトルなどでの短期的な回収だけではなくて、息の長い持続可能なゲームがeスポーツ系のゲームタイトルになってると思うんですが、特にそういったところに日本のゲーム会社はこれから突っ込んでほしいなって思っています。

eスポーツやゲームへの関わり方って、たくさんの形があるんですよね。ありとあらゆるところで、eスポーツやゲームと関われると思っていただいた方がいいのかなと思います。

岡田新しいファイナンスの領域の中で、いろんな工夫を凝らしながら、よりセキュリティを考慮した場を作るというようなことを私の方で今やっています。それが、現在言われている「自律分散的なWeb3.0」、「Web3.0型のeスポーツ」に繋がっていけばいいなと、構想として色々考えています。

たとえば、eスポーツで自分の好きな選手を応援をするとその人に一定のポイントがついて、そのポイントが価値に変わる。そうすると、楽しみながら自分の活動が価値に変わっていくというように、応援をすることでもっともっとeスポーツが盛り上がっていくといいですよね。

これからeスポーツに参入する企業に向けて

岡田稼ぐのではなく「喜びを作る」「感動を作る」という形で参入してもらえるのが理想です。eスポーツに参入する、事業を始めたいと思う企業や自治体は、何のためにeスポーツをするのかをしっかり考えてほしいですね。

地域創生をする自治体は、どうすればeスポーツを使って地域がもっと元気になるか、皆さんがワクワクするようなコミュニティを作っていくかっていう視点で捉えていかないと、どうしても途中で手詰まりになってしまうように思います。

eスポーツやゲームを通して、地域を盛り上げ、その先にある「世界をもっとワクワクさせようぜ」という気持ちが大事なのではないでしょうか。

鈴木事業会社によっては「単発的でもいいから、なんとか認知度を上げたい」という思いでeスポーツ業界に参入して「(認知度のアップを)叶えられなかったら辞める」というのは、経営判断の中である程度仕方ないとは思います。

ただ、僕らBLUE BEESとしては、現状のマーケットサイズにあった、我々が考える適切な報酬で進めていくことを重要視していて、「継続していく」ということを意識しています。業界全体がボトムアップするためにも、eスポーツタイトルが持続的に発展的に続けばいいなというのは自分の願いですね。

まとめ:eスポーツとは「外部のコミュニティに“僕ら”の存在を伝える」ための手段

本セッションでは、地方創生や教育、障害者支援など、さまざまな分野にeスポーツを応用している2人のゲストが思う今後のeスポーツの展開について語られました。

プロゲーマーの活躍や、eスポーツ人口の増加により、ますます注目が集まるeスポーツ。

単なるゲームとしての枠を超え、今後さらに多くの分野での応用が進んでいくでしょう。

また今回の議題に上がった「eスポーツとは何か」という問いに対して、登壇者が指摘した通り「どこからどこまでがeスポーツである」と区分するのは建設的な議論では無く、eスポーツはあくまで「コミュニティ」であり「その存在を外部コミュニティに伝達するための手段」として語られるべきなのかもしれません。


《Ogawa Shota / Matsunaga Haruka》

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